INTERVIEW
YANAI SADAKI

柳井貞樹

テープリライト株式会社 代表取締役 https://www.taperewrite.co.jp/

略歴

立教大学文学部心理学科卒。東洋大学職員・ライターを経て2001年、テープリライトのグループ会社として(有)彩テープリライト設立。2008年、テープリライト(株)が同社と合併。代表取締役に就任。テープリライター養成のため専門学校やカルチャースクールの講師経験もあり。

現在の仕事についた経緯

子供の頃から本と文章が大好き。得意科目は国語でした。
新卒で大学職員として就職してはみたものの、どうしても文章に携わる仕事をやりたくなり、たまたま大学職員時代、就職課員として業務で見かけたマスコミ研究でテープ起こし(文字起こし)の世界と出会い「これなら未経験からでもできるかも」と、前社長にいわば「弟子入り」して、この世界に飛び込みました。
録音取材・ライター・校閲の業務経験を積み、グループ会社を設立して独立。前社長の引退に伴って会社を合併。代表に就任して今に至っています。

仕事へのこだわり

テープ起こし(文字起こし)は決まりをきちんと守って書き起こせばいいだけの単調な仕事と思われがちですが、翻訳やテープ起こしにAIが進出しつつある今日では、型通りにやるだけの仕事はいずれAIにとって代わられます。
きちんと聴き取りができて、用字用語辞典や表記基準を完璧に守っただけでは80点の原稿にしかなりません。
残りの20点は「どんなお客様なのか」「どんな用途に使われるのか」「話者は何を伝えたいのか」を察して原稿の書き起こし方や文体、語り口の残し方などを微調整して初めて評価される部分です。それこそがライターと校閲者の人間としての力、「察する力=想像力」と言っていいでしょう。
そのためには表記規則にあえて従わないことすらあります。規則を「破る」のではなく「超える」のです。規則を守れないライターと規則を知っていてあえて超えるライターは、同じことをしているようで全く違います。
もちろんこれはリスクを伴うことですが、覚悟を持って自分の判断を信じることができるかどうかが、プロとアマチュアの違いだと思います。
また、テープ起こしを依頼されるお客様は「どんなふうに起こして欲しいか」という具体的なイメージを持っていないことが普通です。お客様に質問しても、原稿に関する具体的な指示はまず頂けません。
ですから、依頼時のお客様とのやり取りや添付資料、話者のプロフィールなどから、お客様自身ですら自覚していないニーズを読み取り、原稿に反映していかなければなりません。
我々が洋服を仕立ててもらうときには、自分で寸法を申告することはありません。お店の方に採寸してもらうわけですが、それと全く同じことをテープ起こしでは行っているわけです。
そのためには人間としてのコミュニケーション能力も重要です。「察する力=想像力」に加えて、お客様からいかに必要な情報を引き出せるのかということ。まさに人間力が問われる仕事です。
言葉がなければ人間は人間として成り立ちません。言葉にこだわることはまさに人間にこだわることに他ならないという思いで、常に仕事に取り組んでいます。

若者へのメッセージ

人生において好きなこと、得意なことを仕事にすることが必ずしもベストの選択とは限りませんが、私も含めて当社の社員やライターの多くは、その道を選んだ人間といっていいと思います。
当社は新卒採用を行っていません。業務に求められる「国語力」「文章力」「調査力」そして「察する力=想像力」で一定のレベルをクリアするには、多少なりとも社会人経験がなければ難しいと考えているからです。
規模的にも小さな会社ですから、ゼロから育てることはできません。採用については、これまでの人生で培った言葉のセンスをさらに社会人経験でどれだけ磨き、育てたのかを見ているつもりです。
多くの社員は一般の企業に就職したものの「やはり文章に携わる仕事がしたい」という決意とこだわりを持って転職してきました。
文章に携わる仕事というと、ますは出版社の編集や新聞社などが思い浮かびますが、これらは一部大手の新卒採用以外は、経験者であることが前提の場合がほとんどです。しかし、テープ起こし(文字起こし)はあまりにニッチな世界なので、何しろ経験者というものがほとんどいません。
未経験でも自分の得意なこと、自分の言葉のセンスを武器に新たなチャレンジができるのがいいところです。
どうか皆さんも「自分のこだわりを仕事にする」という選択肢をあきらめないでください。