INTERVIEW
TAMURA HIROSHI

田村弘志

LPSコンサルティング事務所 代表 https://www.lpsct.com/

略歴

東北大学農学部食糧化学科(現 生命素子機能分野)、生化学工業株式会社に入社後、細菌内毒素等の高感度定量法、診断薬を世界に先駆け開発、米国子会社への技術移転等、海外展開に中心的役割を担う。国内外の論文、特許、学会発表多数。現在、LPSコンサルティング事務所代表、順天堂大・医・東京薬大 非常勤講師、株式会社PropGene 顧問、株式会社ケモカインフロンティア 社外取締役、国際誌のエディター、学会・研究会の運営委員、日本バイオベンチャー推進協会(JBDA)専務理事・事務局長を務める。技術系セミナー講演、多数(https://researchmap.jp/lpsct2013)。

現在の仕事についた経緯

私たちが世界に先駆け開発に成功した高感度内毒素定量法は、生きた化石、カブトガニの血液がもつ卓越した生体防御機能を利用しています。リムルス試薬とも呼ばれ、医薬品の製造・品質管理や基礎/臨床研究で威力を発揮し、瞬く間に世界中に広がりました。
その間、プロジェクト責任者として、大学の研究者、企業との共同研究、学会・研究会の運営等に関わり、国内外で幅広いネットワークを築いてきました。製薬企業を退職後は、培ってきた経験や人脈を最大限に活かすため、LPSコンサルティング事務所を開設。魅力的なバイオ素材の発掘やイノベーションの創出、製品の品質向上を支援するとともに、多くの技術系セミナーでの講演、フォーラムの企画・運営、産官学連携・人材育成に携わってきました。

仕事へのこだわり

周りと連携しながら良い仕事を成し遂げるために、常に心掛けていることが3つあります。
1つは、「課題ドリブンでなければいけない」、次に「Freedom to Fail」、最後に「よく飲みよく話しよく笑う」です。
「課題ドリブン」は、解決すべき課題を見つけ出し、その課題を解決するための方法を創造性豊かに模索することです。課題ドリブンな研究は、社会に変革、イノベーションを引き起こすポテンシャルを秘めており産学発展の礎を築く重要なアプローチと考えています。
「Freedom to Fail (失敗する自由)」は、Facebookの創設者、マーク・ザッカーバーグ氏が、ハーバード大学の卒業式のスピーチでこの言葉を使いました。失敗を恐れずに挑戦することの大切さを訴えた名言であり、革新的な技術や製品開発を成功に導くためには、情熱と忍耐をもって新しいことに挑戦し、変化やリスクを冒す勇気を持ち続けないといけません。これは、無駄なことをやろうとしない現代風のスマートな生き方の対岸にあり、失敗の数だけ成功に近づけるという泥臭いプロセスの大切さを教えています。
「よく飲みよく話しよく笑う」は、腹を割って話せる仲間を大切にし、お互いの考えや価値観、立場などを理解しつつ前向きに仕事を進めることです。同じベクトルで、同じゴールを描きつつ、不要なストレスがなければ、より生産的な成果につながるはずです。
私は海と山、自然が大好きで、時々嗜むワインや音楽(生演奏)とともに人生の潤滑油になっています。以前は、海外にもよく足を運び、家内とスキューバダイビングやトレッキングを楽しみましたが、関節の衰えを感じる今は、伊豆の川奈や富戸で、のんびりシュノーケリングをして魚と戯れ、温泉でリフレッシュするのが定番のコースとなりました。その時、思いがけず幸運な出会いがあったり、ふと良いアイデアが浮かぶことがあったりするので、趣味や遊びも決しておろそかにしないように心掛けています。

若者へのメッセージ

日本の科学技術の世界的な地位低下が懸念される中、何かの役に立つという以前に、なによりも純粋な好奇心を持ち続けることが大切です。真理を探究するという、本来のあるべき姿を思い起こし、良い仲間とともに初心と熱意、泥臭さを忘れずに突き進んでいただきたいと思います。それが真のリーダーシップの醸成にもつながります。
日本の若手は、サイエンスだけではなく、様々な領域で、神業に近い多くの偉業を達成しています。野球の大谷翔平、イチロー、ボクシングの井上尚也、体操の内村航平、スキージャンプの小林陵侑、テニスの錦織圭、将棋の藤井聡太など異次元で世界が称賛する若いアスリートや超人たちです(でした)。いずれも、天賦の才能に加え、情熱と夢を持ち続け、実現にむけてひたすら邁進した覇業であることは論を待ちません。
各人の才能と努力を開花させるべく、刺激が多く、笑顔に満ち溢れたわくわくした日々を過ごしていただきたいです。それには、まず自らの可能性を信じ、何事にも主体的かつ継続的に取り組んでください。それが新たなビジネスチャンスを生み、様々な人との出会いが自分をさらに成長させてくれるはずです。