INTERVIEW
TAKEI HIROKI

武井宏樹

池田金属工業株式会社 代表取締役 https://www.ikekin.co.jp/

略歴

甲南大学経済学部卒業。新卒で大手ハウスメーカーに入社、関東にて営業職に従事し店長を経験。結婚を機に義父が経営する池田金属工業株式会社に事業承継者として入社。2018年、神戸大学にてMBA取得。2021年より代表取締役に就任。事業承継者専門のプロコーチとしても活動中。

-現在の仕事についた経緯-

妻が同族企業の2代目社長の娘だったのですが、事業承継者が不在で後継者として声がかかったためです。
また、新卒で入った会社にいたままでは、なりたい最高の自分には届かないと思ったことも理由の一つです。
前職では企業理念をベースに商品や仲間も好きでやりがいを感じていましたが、急成長する売り上げに現場の仕組みが追い付いていませんでした。改善要望の声は現場から本社には届かず、自分なりの理想の企業をつくるには社長をやるしかないと強く感じました。
また自分たち独自の強みを活かして社会やお客様に貢献する企業のトップでありたいという自分の個人ビジョンを叶えるためには、中小企業で早くから経営実践の経験を積むことが実現の近道だと感じました。

-仕事へのこだわり-

座右の銘である「先義後利」は意識しており、まず相手にGIVEの姿勢はもちながら、自分たちの幸福も手放さないという長期的な両立にはこだわりがあります。
そのために相手の本質的なニーズは何かをヒアリングしていくことが癖になっています。相手と言ってもお客様だけでなくステークホルダーは様々です。働く仲間はもちろん、仕入先様や銀行、メディアの方などもいらっしゃいます。
またB2Bだとニーズは時によって複数の単位別に切り分ける必要があります。例えばお客様の場合、企業全体、所属部門、個人と、実はそれぞれ少しずつ望まれていることが異なる場合があります。
さらに短期と長期、個と全体などニーズ自体に矛盾を抱える場合もありますが、それらを丁寧にヒアリングしながら落としどころを「一緒」に整理していくのは楽しい作業です。
これは前職のハウスメーカー勤務時代に鍛えられたかもしれません。注文住宅を建てられるお施主様は、同じ家族であってもお一人ずつ理想の要望をお持ちで、さらにまだ実物がないため言葉だけではなく五感すべてで感じ取る必要があります。
また欲しいと言われるのは「理想の暮らし方」であって、キッチンや洗面台などの単体ではなく、それによって得られる効果や価値です。
つまり全体像を把握しておかなければ、本質的なニーズは満たせないということです。
弊社イケキンは、ねじを中心とした締結部品を提供していますが、締結体全体や前後の業務フローに求めるQCDSをトータルでヒアリングしながら試験や教育などのサービスも提供してお役立ちに努めています。
こうやって話をしてみると、相手の本質的なニーズを掴むというのが最も大きなこだわりかもしれませんね。

-若者へのメッセージ-

まだ自分も若く実践中の身のため、アドバイスではなく自分が考えていることを書きます。
30年以上先の個人ビジョンを描くこと、それは仕事のこと、家族とのこと、自分自身のことをそれぞれ別々になれる最高の自分を描き、統合することです。
あとはビジョン実現のために逆算するだけなのですが、先が長いので積み重ねが大切になります。小さなことでも5年、10年と積み重ねれば大きな差を生むことができると信じています。また自分はすぐにサボりたい衝動に駆られますが、30年という道のりは長いため多少は回り道をしたり止まったりしても大きな問題にはなりません。最終ゴールに到達することさえ忘れなければ、仮に道を外れても戻ってくることができます。
そして背伸びをした中間目標をつくることを大切にしています。今の自分が届くか分からない高い目標を設定し、現状と比較してギャップがあるところは思い切って成長プランを練ります。成長できるであろう環境を創造し、少し強引に身を置くようにしてしまいます。例えば、自分がその場にいることが恥ずかしくなるような(自分のレベルが低くて)集団に飛び込んで共に学んだり、失敗の可能性が高そうなチャレンジをしたりということを心掛けています。