INTERVIEW
TAKAHASHI MIKI

髙橋美樹

樹 -ITSUKI- 代表 https://itsuki-group117.com/

略歴

1999年より、各種機構病院の看護師、保健師として医療に携わる。各種外科内科、手術室など、様々な診療科にて患者様に看護提供をする。その傍ら、チームマネジメント、リーダー業務、新人教育、看護実習生教育、感染対策、看護研修開催、災害看護研究、日本代表アスリート健康支援、特定健診保健指導など多岐にわたる業務を経験。2021年に独立。各種団体・企業の保健室担当・顧問により、経営者やビジネスマンの心の拠り所として活躍中。「人」に関する悩み事の専門家。得意は人間関係構築とマインドサポート。税理士、社会保険労務士、弁護士等とともに中小企業及び医療機関の事業継承支援を展開中。

現在の仕事についた経緯

私は幼少の頃、人の身体と心に興味を持ち看護の道へ進みました。安心安全な看護が提供できるように、試行錯誤しながら経験を積むことで確信したことがあります。それは、個人が自身の存在意義を自覚しながら、喜びを持って組織に属することが、健全で機能的な業務へと発展するということでした。そのためには円滑なコミュニケーションが最も重要と考え、個人が自分の意向や思いを表出できるように、上下横との連携を強化することに努めてきました。
心理的安全性のある職場の雰囲気は、今でこそ声高に言われていますが、医療の現場においてはその土台があることで間違いや誤解をなくし、患者さんの命を正しく守ることに繋がると言っても過言ではありません。また、組織のビジョンや在りたいチーム像を掲げるのはもちろんですが、スタッフ個々の特性や資質、心の背景、それぞれの成長課題を見つめていくことはとても大事です。個々が力を充分に発揮できるようにするためには、一人一人を愛護的によく見ることがいかに大事かを学びました。個を見つめ、組織を活かす感覚でしょうか。看護を通して培われたいのちへの価値観と死生観が自分のものとなったとき、病院という盾がなくても、自分を活かして違った何かを誰かに貢献できないだろうかと思ったことが独立のきっかけです。
ブランディング、マーケティングを学びながら辿り着いた現在地は、これまでの経験を活かした会社の保健室の先生。「心」を整えることが、「人」を整え、「組織」を整えていく事に繋がる。会社の生産性の向上や経済利潤を図るために、私は「人」の分野にフォーカスして介入させて頂いています。
「ねぇ、ちょっと聞いて」の一言が頂ける、垣根の低い保健室を目指しています。

仕事へのこだわり

【紡がれた「いのち」には進むべき目抜き通りがある。自分から目をそらさなければ、あなたはあなたの真ん中を生きられる。】
これは私のコアメッセージです。
どこで働こうと、どのようにして働こうと、たどり着く基盤は自己理解と他者理解。すなわち「人間理解」です。
企業の理念やビジョンを掲げ、その方向に全体が向かっていくには2つの視点が必要。「個」の視点と「組織」の視点。「組織は人」というように、この2つが掛け合わさることで、人が変化し組織が進化していきます。
自分と似ている人似ていない人、好きな人苦手な人。目の前の物事をみるときに好き嫌いだけで判断せずに、その背景を洞察することはとても大事です。余白のある適切な理解をするためには一旦感情を横に置いて、事実を俯瞰してみる事。そこがスタート地点です。
ですが、ここで躓いて目を伏せたり逃げたりする事例は実に多い。戦わずして和するためには、心の窓口をなるだけ広く開けて、一つの視点からだけで物を見ないこと。そうすることで格段に見える世界と結果は変わってきます。
人間関係を築くためには、人間理解。なにもみんな仲良くしてねと大ざっぱなものではなく、それぞれの程良い距離感、適切な関係というのは存在します。着地点に落ち着くまでの違和感は丁寧に拾う。自分の中の小さな気づきを拾うことで、より納得のいくものになります。
コミュニケーションって難しい面もありますが、人が社会性をもってよりよく生きるための手段であり味方になってくれるものです。自分の気持ちを大切にしながら、自分の向かいたい所へ向かう。人との関わりは避けられないものだから、そこはとても大切にしています。

若者へのメッセージ

まずは自分のことをよく知ることがとても大切。自分は一体どういう人なのか、言語化してみることをお勧めします。
幼少の頃から現在までどんな足取りで生きてきたか。自分は何が好きで、どんな時に心が震え何を大切にして生きてきたか。良い経験、そうでない経験から何を思い何を得てきたのか。そこから派生する思考のクセや行動パターン。目に見えるスキル、目に見えないスキルは何か。自分が意識せずに自然とできてきたことは何か。なぜその選択をしたのか。これらを掘っていく作業がセルフブランディングで、自分の宝探しをするイメージです。
何気ない毎日の中で、自分を深く知るという作業は、見過ごされることが多いです。一度はじっくりと時間をとって、自分と向き合ってみると良いかもしれません。自分はこういう人なんだと少しずつ人に言葉で伝えられるようになると、自身の解像度が少しずつ上がってきます。
次に自分の何を活かして、どんな風に世の中に参加、還元していきたいのか。ベクトルを自分に向けた後は、外へも向けてみると多面体で自分が出来上がってきます。難しいかもしれませんが、それがわかってくると、自分の職能や挑戦したいビジネスが見えてくるかもしれません。
また、働く時間は人生の多くの時間を占めます。時間は自分の「いのち」に等しいです。働きがいが生きがいとなったら、自己実現へと繋がっていきます。楽しみや目標が重なりあうことで、明るくて活力ある毎日へと移行しやすいのではないでしょうか。
そこで大切なのは、自分の【こころ】を忘れないこと。心は自分にしかない人生の羅針盤。正の感情も負の感情も受け止めたり、受け入れてみる。
生きていく上で一番身につけてほしいことは、【心を整える】術を持つこと。ケガをしたら絆創膏を貼る、病気をしたら病院に行く、肉体の傷は目に見えやすいから手当もしやすい。でも、心は自分が気づくか、若しくは人に気づいてもらわないと、どんどん鈍っていきます。自分を守るために仮面のようなバリアを張り続けることになります。何が好きで、何が楽しくて、何に心躍るのか、本来あったはずのそんなシンプルなことさえもわからなくなります。心というセンサーの鈍りを感じたら要注意です。
辛かったら人に打ち明けること。頼ることは恥ずかしいことではありません。見栄もプライドも要りません。心の温度を保っておくことで、人との交流も人間味を帯びて暖かくなっていきます。人は思考だけでなく心が交わることで、喜び悲しみ、悔しさ、嬉しさ、色々な感情を分かち合うことができます。そういった関わりによって、心豊かな人間関係の土壌を肥やすことができます。
自分を知る、自分を認める、他人を知る、他人を認める、違いを知る、違いを認める。人間理解をするにあたってこの考え方を意識していくことによって、生きていくことが少しずつ楽になるかもしれません。
優れなくていい、異なりこそ武器。それがあなたの大事な個性と存在意義です。その本質が腑に落ちたとき、これからのビジネス人生への起爆剤になるに違いありません。