INTERVIEW
SUZUKI TATSURO

鈴木達朗

株式会社鈴木工務店 取締役社長室長 https://suzukikoumuten.com/

略歴

1992年東京生まれ。早稲田大学、大学院にて建築を学んだ後、2017年に大成建設へ入社、主に研究開発に従事。2021年早稲田大学にて博士(工学)取得。2021年に大成建設を退社し、鈴木工務店取締役となる。2022年~早稲田大学招聘研究員。受賞:日本建築学会奨励賞、前田記念工学財団山田一宇賞など。

-現在の仕事についた経緯-

私が大学に入学する直前の3月に東日本大震災が起き、その脅威に今までの価値観が崩れました。その後、建築を学ぶ中で防災を専門とする恩師に出会い、研究室に入ります。卒業後も企業で建築の防災に関する研究開発に従事しながら、木造の防火をテーマに博士号を取得。
一方、家業は八十年近く建設業を営んでおり、先代たちが作り上げてきた会社・チームを守り次の世代につなげたいという気持ちが強くなり、家業に戻りながら研究活動も続けていこうという決意をしました。家業では型枠・内装の専門工事を主体としながら、内装の設計施工などの新規事業にも注力しています。建築の防災に関する研究も、大学に籍を置かせてもらいながら社会に貢献したいという気持ちで続けています。結果、現在は会社経営、研究開発、設計を主な仕事としています。

-仕事へのこだわり-

自分の仕事の流儀や作法はほとんど持たないようにしています。気にしているのは、遅刻しない等の当たり前のことや、何となく決まったペンを使っているくらいです。あとは、仕事の可能性を狭めないために、できるだけ柔軟に逐一その状況によって最適な判断をするように考えています。

以下は、仕事の内容へのこだわりです。
■木を適材適所で使う
都心部への炭素固定や国産木材の活用など、木を使うことが非常に重要となってきています。私は、木造の防耐火性能に関する研究やコンサルを進めると共に、リノベーションの設計でも積極的に木を活用しています。
■チームで取り組む
建設工事は一人ではできません。基本的にはお金を払って仕事をしてもらいます。その時、仕事に必要なお金を払わないともちろん人間はついてきませんが、お金だけでも良いパフォーマンスは生まれないと思います。前向きに仕事をしてもらうには、会社のあるべき姿や工事が完成した喜びを分かち合い、アイデンティティを共有することが重要だと思います。

-若者へのメッセージ-

私自身が若者なので設問にあっていないところがありますが、若者/年長者という対比自体の意味が薄れていくと思います。それは、知識がオープンソース化していたり、AIや機械学習によって経験の利も少なくなってきたりするためです。
「自分や家族が生きていくために人生を選択して仕事をしてお金を稼がないといけない人」を若者として喋りますと、日本は経済成長も終わっている上、日本の政治や企業の多くが先進国の経済と技術の発展について行っているとも思えません。景気を見通すのも難しくなっています。就職して終身雇用で安心という時代ではないので、若者にとっては、将来の不安ばかりが目立つ、非常に息苦しい世の中だと感じます。
そんな中でも、見分を広め、考え、悩み、決断することを続けて、独自の道を見つけることが必要なのではないでしょうか。他人と一緒だったら良いという時代ではないと思います。むしろ、他人と同じことをしているだけでは危機感を持った方がいいと思います。私自身も若者なので耳が痛いです。