INTERVIEW
SHIKAUCHI MANABU

鹿内学

株式会社シンギュレイト 代表取締役 https://cingulate.co.jp/

略歴

群馬大学大学院で修士号を取得後、博士課程から奈良先端科学技術大学院大学へ進学し、博士(理学)を取得。2008年より京都大学の特定助教として、最初のキャリアを踏み出す。博士課程の大学院生の時を含めると約10年、認知神経科学の基礎研究に従事。脳情報で家電などを操作するブレイン・マシーン・インターフェースの国家プロジェクトにもかかわる。2015年よりビジネスサイドに軸足を移し、企業組織のマネジメントや人事のデータ分析であるピープル・アナリティクスに携わり、現在も第一線にて活躍を続ける。

-現在の仕事についた経緯-

研究者としてかかわった国家プロジェクトが終わる頃に、国内人材大手からオファーをもらいました。採用の意思決定の早さと、未知の業界に対する好奇心から、オファーをもらった企業に入社を決意。新規事業開発での企画職として入社し、当時は認知されていなかった“ピープルアナリティクス”に出会いました。
一方で、大企業の仕組みの中では次世代のピープルアナリティクスの事業化は難しいと感じ、在籍中に起業。メディアでの発信を通して、ピープルアナリティクスの普及に努めながら、これまでの知見を活かし、1on1サポートツール「Ando-san」や組織診断サーベイ「イノベーション・サーベイ」を開発し、現在に至ります。

-仕事へのこだわり-

僕のこだわりを示す1つのエピソードがあります。それは、ビジネスサイドへの入口となった大手人材企業の採用面談。そこで、次のような質問をされました。
「横軸に、仕事を始めた年から現在までの働いてきた年月を表す折れ線グラフを書いてください。縦軸は任意に設定し、グラフのタイトルをつけてください。」
この質問に対する僕の回答が、「タイトル『生産性』 / 縦軸『横軸を挟んでプラス側にアウトプット、マイナス側にインプット』」です。僕は研究者の時代から、仕事をする中で、生産性を高めることを自覚的に行っていました。ビジネスを始める前から、いかに生産性を高められるか?にこだわっていたということです。

また、「インプット・アウトプット問わず質の高い仕事をするべきだ」とも考えています。一方で、量が質を凌駕する、ということも。質を生み出すための、量があります。新しいことを始めたときは特にそうです。ビジネスサイドに軸足を移した時も、ゼロからのスタートと思い、ひたすら情報収集をしました。しかし、ビジネス上の業界知識などは、テキストに体系化されていることは少なく、人に教えてもらうしかないことも多いのです。その時に大事にしていたことが、話を「聴く」こと。ただし、相手の話を黙って「聴く」だけでは足りません。少しでも仮説をたてて「聴く」ことが大事です。

さらに、自己開示も大切です。自己開示は相手を「信頼」するための第一歩。自己開示によって、相手からの「信頼」も得やすくなり、相手が自発的に話す以上に話が引き出しやすくなります。信頼関係を築くことができれば、インプットの質が高まり、アウトプットを高めることにつながっていくでしょう。

「インプット・アウトプットの質を高め、生産性の高い仕事をすること」これが僕の仕事へのこだわりです。

-若者へのメッセージ-

研究のようなインベンション(発見・発明)競争も、経済活動におけるイノベーション競争も、時に不公平で不条理です。「仕事へのこだわり」の中で、量を積み重ねることへのこだわりを書きましたが、それは雌伏の時でもあります。まだ何も成されていない中では焦ることも多いでしょう。その中で、なぜか成果を出していく隣人を垣間見ると、ますます焦ります。

また、明らかにうまくない積み重ね方をしている方もいます。それはおそらく無駄な努力。ただそれは、出来る人から見れば、“僕自身も無駄な努力をしているかもしれない”という疑心暗鬼にもつながります。正当な努力だとしても、全てをコントロールできない中で成功は確率的です。他では行われていない「新しい野心・挑戦」ほど成功は微々たる確率でしょう。僕自身もいまだに何かを成したことがないのでよくわかりませんが(何かを成してもわからなさそう)、自分を信じ、時に自分自身を疑って、方向を変え頑張っています。

誰かへのアドバイスは性に合わないので、上記のような僕の認識をもって助言に代えます。図らずも同じ時代に生きています。共に頑張ってみましょう。