INTERVIEW
SAITO TOMONORI

齊藤智法

デザインで株式会社 代表/クリエイティブディレクター/デザイナー https://designd.jp/

略歴

神奈川県横浜市のお寺に生まれ、武蔵野美術大学基礎デザイン学科を卒業後、株式会社電通にて11年間アートディレクターとして勤務。2020年にデザインで株式会社を創業。広告クリエイティブ領域で培ったスキルを生かし、あらゆる課題にデザインで向き合い解決する会社の代表として、日々デザインで様々なクライアントと向き合う。お寺の長男として仏教に向き合う側面も持つ。

現在の仕事についた経緯

物心ついた頃から漠然と「お坊さんという職業」に違和感を感じ、幼少期から通っていた絵画教室で身についた“絵を描くこと”を活かした職に就けば、実家のお寺を継がずに人生を切り拓けると考え、美術大学から広告会社という進路を志しました。
広告会社で「デザインを通じて社会や人に喜んでもらう仕事」を経験できたことと、美術大学で「領域を分けない広義のデザイン」を学んでいたことが相まって、捉え方次第で自分の仕事もキャリアもひとつにデザインしていけることに気付き、自分の身近にずっとある仏教とも改めて向き合うようになりました。
あえて背を向けてきた仏教に対して新鮮な感覚で向き合うことで、クライアントの課題解決や会社の経営においても、考え方や判断に迷った時のひとつの指針となっています。

仕事へのこだわり

一生懸命に社会や相手と向き合い、ふと振り返っては自分と向き合う。職人的な技術の追求もさる事ながら、自分は仕事との向き合い方のメリハリに重きを置いています。
例えば、最初は小さい部分的な仕事を依頼されたとしても、その向き合い方ひとつでそれが大きい全体的な仕事になることを経験して理解していれば、きっと向き合い方からデザインするようになると思いませんか?
ただ、デザインの世界は成果物(結果)が重要です。どんなに器用に言葉を並べたとしても、目に見える色や形や質感が人の心を動かす世界であることは間違いありません。社会人になった頃は特にそう思っていたので、その美意識やデザイン性が社会的にも業界的にも評価されるものを追求していました。
しかしある時ふと違和感を感じるようになりました。広告会社の一社員として、目の前のデザインという結果を追求し続けることが周囲に良い結果を生んでいくのかどうかを考えた時に、次のステージへ進むことが決まりました。当時、あまり良い、因(いん)と縁(えん)が生めていなかった自分に気付き、自分が本来目指していたデザイナー像や仕事像にも改めて立ち返り、たとえ時間がかかっても、より良い行動と出会いを紡いでいけるようにしようと思い直せたから、今の会社と仕事があります。
最近はひとつの仕事やプロジェクトの中においても、良い因縁果をどうデザインするかという視点も持つことを大切にして、ひとつひとつの仕事をより立体的に捉えて向き合うことができています。
会社としてやっているからこそ、クライアントに対しても、社員に対しても、社会に対しても、幸福度を高めるための努力を惜しむ理由はありません。それを、デザインで実現できるように努めています。

若者へのメッセージ

「旧時代的な仕事の仕方」という表現をよく耳にするようになりました。進んで残業をするとか、根性論的な話はまた別の問題ですが、「最近の新しい仕事の仕方」という漠然としたイメージと比較してしまうと、確かに大体のことがそうなってしまうと思います。
新しい仕事の仕方というと、例えばテクノロジーやAIを活用したり、オンラインでも対応できたりというイメージでしょうか。でもそれはあくまで「仕事の仕方」の話であって、仕事は本来、人がそれぞれ社会の中で力を発揮してその評価と対価を得て、幸福でいるためのものだと思います。仕事の仕方の話に終始してしまうと、たどり着けない世界もきっとあると思います。仕事の仕方よりも、その目的から考えて、自分が本当にやりたい、なりたいと思う理想を目指して、まずは突き進んで行くのがいいと思います。
今はいろんな情報や人にもすぐアクセスできるので、以前よりも本当に恵まれていると思います。思い立ったらまず行動できる人が強い時代だと思います。こんな大人でよければ、いつでも相談に乗ります(笑)。やりたいことや好きなことが見つかったらとても良いですし、それを通じて社会や人の役に立てたら尚良いじゃないですか!これからの時代をつくる世代の人が1人でも多くそうなれる社会になるように、自分ももっと精進します。