INTERVIEW
OHTA KAZUHIKO

太田一彦

椅子工房 株式会社オオタ 代表取締役 https://isu.co.jp/

略歴

1986年、日本大学工学部建築学科卒業。大学卒業後バックパッカースタイルでヨーロッパを旅し出会いの素晴らしさを体得。1986年、商業施設の設計施工会社に入社。1989年、家業の後継者として現在の会社に入社。1997年、代表取締役に就任。1998年、国家資格の一級家具技能士を取得。2004年、オリジナルデザインの家具「家族の椅子」の展開開始。2005年、愛知万博愛知県館のVIPルームに天皇皇后両陛下をお迎えする椅子を設計、制作、納入。2007年、名古屋モード学園インテリア学科の講師に就任。2008年、メディア露出の当たり年となり、テレビ・新聞・ラジオと立て続けに取材を頂く。2011年、椅子職人としては西日本第1号で全技連マイスターに認定される。2013年、愛知県から技能検定委員の辞令を交付される。2014年、中部椅子張同業組合の理事長に就任。2015年、愛知県知事から「愛知の名工」に認定される。2023年、愛知県知事から厚生労働大臣宛に「現代の名工」の推薦を受ける。

現在の仕事についた経緯

1989年のバブル期に設計施工会社から父が経営する現在の会社へ移籍しました。そこは、叩き上げの職人の世界で、「入社」というより「入門」という感が強くありました。
カルチャーショックとともに狭く厳しい世界で、逃げ出したいほどの局面が何度もありましたが、多くの出会いに支えられ、また出会いが未来の道を指南してくれて現在に至っていると思います。

仕事へのこだわり

一般的に「ものづくり」=製造業と考えられていますが、時代背景の進化とともに製造業は人件費の安い東南アジア諸国に職を奪われていく様を見てきました。
さらに昨今では、あらゆるものづくりには「ITやAI」などが導入され、機械化、合理化が進み、高性能、高機能でありながらも肝心な「もの」の価値が下がっているようにも思えます。
ところが私の扱う「椅子のものづくり」に限っては、多くの技能や知識を必要として一向に機械化が進まず、現在もほとんどが手仕事で、将来的にも機械化は困難であると思っています。そんなことも起因するのか若き担い手が減少していることを残念に思っています。
私は技能職として、ある時から「表現者」を意識するようになりました。「表現」は未来へ届けるものと思っています。例えばお客様の「明日が素敵」になるための製作物でも、十分に「未来」へのチャレンジだと思っています。
蓄積した知識や経験を踏み台に、未来を想像しながら「明日の素敵」にチャレンジをしています。
現在では、設計者やデザイナーが思い描く未来を、知恵と情熱と技能を駆使して「表現する」ことに支持をいただきながら、ものづくりに励んでいます。

若者へのメッセージ

就活中の学生の方へも、就職して社会の厳しさに打ちのめされそうな貴方へもお伝えしたいことがあります。
さて昨今、社会時事はあまり良好な気運でもなさそうなので、その論評は別の方にお任せするとして、楽観的人間の太田は、「未来」をテーマに臨もうと思っております。
もともと「未来」に対してとても好奇心がありまして、子供の頃から、その先には何が見えるのだろう?と、穴があったら覗いてみたい、開かない扉は開けてみたい、高いところがあれば登ってみたい。と繰り返し、60歳を過ぎ、もう少しちゃんと「未来」を思うようになりました。
時代の状況がどうであれ、「未来」は進化を遂げながら永遠に続いていきます。
「未来君」は私たちに何を期待しているのだろう?と考えます。ヒントは、私たちには蓄えてきた知識や経験、技能スキルがある、そして情熱だってまだまだある!ということです。
いかがでしょうか?私たちは「未来君」の欲しがるものを結構持っているのではないでしょうか?何もしない手はありませんよね!
「未来君」とお友達になれるよう「勇気」「チャレンジ」「ジャンプ力」をポケットに詰め込んで未来に向かって歩んでいきましょう!