INTERVIEW
NOMOTO ATSUSHI

野本篤志

一般社団法人日本がん患者サポート協会 代表理事 自然循環型ブルーベリー農園くぬぎ野ふぁーむ オーナー https://soudan-gan.com/

略歴

筑波大学医科学研究科修士課程後、藤沢薬品工業株式会社(現 アステラス製薬)に入社。新薬の研究開発に22年間従事後に退社し、自然循環型ブルーベリー農園を設立。農園を運営する傍らで、がん患者会やNPO法人(現在は一般社団法人)を設立し、がん患者のサポート(主に末期がん患者への相談や指導)をしている。著書に『がんとの共存を可能にする3つの治癒力強化法』(幻冬舎)など多数。

-現在の仕事についた経緯-

私の母は私が高校1年生の時に乳がんを発症しました。それを機に薬で人々を健康にしたいという思いで、大学の薬学部を卒業して製薬会社に入社し、新薬の研究開発の道に進みました。その後、私が45才の時に母は胆管がんを発症しました。手術後に担当医から再発予防のためにと、抗がん剤の投与を勧められました。
その時、父(銀行勤務の傍ら母の初発症後に独学で医学を勉強)より「抗がん剤は免疫力を下げるのになぜ再発予防に使うんだ?」と問われました。この父の素朴な質問をきっかけに、私の健康に対する考えが180度変わりました。
「人には生まれつき病気を治す力(自然治癒力)があり、その内なる力を100%発揮できれば、がんを含むすべての病を治癒することができる」ということです。
その考えを体現するために49才で会社を辞めた私は、独学で分子栄養学、臨床心理学、補完代替療法などを学び、本業(ブルーベリー農園)の傍らライフワーク(がん患者のサポート)に取り組んでいます。

-仕事へのこだわり-

私は研究所で創薬研究に携わりながら、労働組合の支部長として会社と共に職場への目標管理システム(Plan-Do-See-Checkのサイクル)の導入と定着を進めました。その後は開発部門に移り、臨床試験の責任者として、東京・大阪合わせて約50名の部下とともに目標管理システムを活かしながらチームで仕事をしてきました。退職後は患者会や農園で様々な地域コミュニティーを作り、健康をテーマに活動しています。
全く異なる環境で仕事を遂行していく中で共通して大切にしていることは、「物事の本質」を見極めて自分(あるいはチーム)がいきいきと働くことができる行動の基軸(理念やビジョン)を作り、それに沿った具体的な目標を策定して活動することです。
その基軸の中には必ず「利己的な部分」(自分や組織のため)と「利他的な部分」(相手や世の中のため)が含まれていますが、できるだけ後者を多く取り入れるように心がけています。相手から感謝される行動(利他的な行動)を取ると、脳から「オキシトシン」というホルモンが分泌されます。「オキシトシン」は「幸福ホルモン」とも「絆ホルモン」とも呼ばれ、このホルモンが分泌されると深い幸福感を感じるとともに、相手との信頼関係が醸成されると言われています。
すなわち目標管理システムの成功の鍵は、個人あるいはメンバー全員が「オキシトシン」を分泌して、生きがいや働きがいを実感できる行動の基軸を作れるか否かにかかっていると思います。
また「物事の本質」を見極めるために、選択・決断をする時には必ず「いつ(WHEN)、どのように(HOW)」行動するかを考える前に「なぜ(WHY)」その行動をするかを考えるようにしています。私が人生半ばでほぼ180度の大きな方向転換をしても、なお生きがいを持って働き続けて来れたのはこのスタイルを貫いてきた結果だと考えています。

-若者へのメッセージ-

人生の目的は幸せを体感することです。わかりやすく言うと、死ぬ時に「ああ、いい人生が送れたな!」と一生を振り返られるかどうかです。あのスティーブ・ジョブズでさえ「仕事を除くと喜びの少ない人生だった。迫る死を目の前にすると名声や富も色褪せてくる。」という言葉を残しています。
ではどうすれば最後に悔いを残さない人生を送れるのでしょうか?
私のところには、月に1人~2人、主に末期(ステージⅢ~Ⅳ)のがん患者さんが相談にみえます。その方々と接して教わった3つの大切な生き方をお伝えします。

(1)一日一生の生き方をする
末期のがん患者さんは、これまで辿ってきた過去の後悔とこれから降りかかるであろう不安の中で生きています。そこから奇跡的に生還する人は「たとえ今日寿命が尽きても後悔のないように、一日一日を大切に生きよう!」と思い定めることができた人です。朝起きた時に「自分の寿命は今日一日だとしたら、自分は何をする?」と考えて、毎日を大切に過ごしてみてください。

(2)人生の基軸をもつ
「あなたが人生で1つだけ選ぶものは何ですか?」この質問の答えがあなたの人生の基軸になります。もちろん2つでも3つでも構いません。あなたが本当に大切に守りたいもの、育んでいきたいものが心豊かな人生を送る道標になります。

(3)心地よい方を選ぶ
人生は選択・決断の連続です。運命の分かれ道はいくつもあるでしょう。あなたが迷った時は直感に従って「心地よく感じる方」を選んで進んでください。それがあなたらしく生きる道に繋がっています。