INTERVIEW
MATSUKURA HIROMI

松倉洋海

YAKUSHINKAI(CAMBODIA)CO.,LTD. 学校長 https://yakushinkai-cambodia.com/

略歴

大学卒業後、日本で教員として1年間勤務後、カンボジアへ移住。プノンペン大学外国語研究所にてクメール語を学び、教育支援のNGOの現地事務局長としてカンボジア教育支援に8年間携わる。2017年より現職に就き、外国人材の送出し事業を行う。

現在の仕事についた経緯

学生時代から東南アジアで働きたいと考えていましたが、海外駐在が出来る会社の就職活動に失敗して、1年間日本で勤務しました。しかし海外勤務が諦めきれず、海外へバックパッカーとして旅に出ました。
旅やボランティア活動の中で、自分がいかに恵まれているかに気づき、途上国の教育事業に携わりたいという想いからプノンペン大学外国語研究所にてクメール語を学び、カンボジア学校建設の仕事に関わり始めました。建設した学校で授業を見た時に、教育の中身がなければ、学校はただの箱でしかないと感じました。そのため、教育の中身に関わりたいと決意して、教育支援のNGOにて立ち上げから8年間カンボジア教員養成などの支援に就きました。
さらに現場に近い活動を行いたいとの想いから、カンボジア人の妻と一緒に、プノンペン市内に日本で働きたいカンボジア人向けの学校を運営しています。

仕事へのこだわり

私は仕事では、常に想いを持って凡事徹底で物事に取り組むことを大切にしてきました。
学生時代から、勉強、部活、アルバイト、何をやっても人よりも時間が掛かる要領の悪いタイプで、情熱や想いはあるけれど、特別な才能もなければ、そのための努力もしてきませんでした。社会に出ると、要領が良く、才能豊かで経験豊富な人たちがたくさんいます。私の場合は特に若い時から海外に出ているので、目的意識の高い優秀な人と自分を比べては、いつも自信をなくしていました。
しかし、私が羨むような才能や経験を持っていると感じた人たちは、必ずしも尊敬できる人だったわけではありません。細かいところを見ておらず、人任せにしていたり、放っておいたりして、楽観的に考えて段取りを御座なりにしているケースが多いことに気づきました。能力では到底勝てないけれど、当たり前のことを真面目に取り組むことが出来るようになれば、自分の武器になると感じました。まさに、うさぎと亀の話に出てくるノロマな亀のように、最後まで諦めずコツコツやっていこうと決めました。
人よりも要領が悪く、不器用な人間という自覚があるからこそ、当たり前のことを当たり前にやろう、という凡事徹底の精神が私の中に生まれたと思います。カンボジアの教育に長いこと携わっていますが、途上国こそ、誰もが出来る当たり前のことを重要視していません。新しい見栄えの良いことばかりがフォーカスされて、基礎の重要性を理解している人が少ないです。
「国家百年の計」という言葉がありますが、教育に携わるということは、国づくりに携わると言っても過言ではありません。自分は特別な才能はないですが、真面目に事業に取り組み、凡事徹底の精神でカンボジア人の教育と向き合っているからこそ、長くカンボジアにいることが出来ていると思います。

若者へのメッセージ

日本人の若者には、特別な才能は必要ないから、想いを持って行動をしてほしい、と思います。
私は、どれだけ想いを持って働けるかが、仕事の質に影響してくるのではないかと考えています。想いを持って働くために特別な才能や技術は必要ありません。想いを持つために必要なことは、色々なことを知るための好奇心だと思います。様々なことを見て体験して感じることで、自分の想いが生まれて、自分の道標になるのだと思います。何も知らなければ何も感じることが出来ません。
私は、日本で働きたいカンボジア人の若者の教育に携わっています。カンボジアやそこで暮らしている人々のことを知ろうとしないと、良い教育機会を作ることが出来ません。同時に、日本でカンボジア人を受け入れる企業のことを知らなければ、何を求められているのかを知ることが出来ません。まずは興味を持って知ることで、自分に何ができるのかを常に考え続けることが出来ます。
コロナ禍で行動が制限されていたからこそ、もっと積極的に行動して好奇心を刺激してほしいと思います。日本が抱える様々な問題点を知ることで、もっと良い国になるための問題意識を一人一人が持つことが出来たら、日本の将来は明るいと思います。