INTERVIEW
KOBAYASHI SHINOBU

小林忍

株式会社未来研究所 代表取締役社長 https://future-research.jp/

略歴

愛媛大学工学部卒。現職:株式会社未来研究所 代表取締役社長。上場会社を含む団体へのサイバーセキュリティコンサルタント(CSIRT,ISMS,CSMS等)業務、およびIT分野でのMSP(Managed Service Provider)事業を推進中。オセアニア政府で活用されているサイバーセキュリティ脆弱性診断ツール・AEGIS-EWの、日本独占権を取得し販売を開始。2016-2019/12月 アライドテレシスアカデミー株式会社 代表取締役(サイバーセキュリティ教育事業の企画・実施)。サイバーセキュリティ研修マップ、および研修ソリューションをゼロから構築し、実施運営を実施。実績としては、ISACA CSXの日本初販売、経済産業省・第四次産業革命での認定取得、JMOOC 2019年度・第2位のダウンロード等。事業拡大につき親会社への合併が決定(2019年12月)。2006-2016 スリーイーグルス株式会社 代表取締役(ITソリューション構築、教育事業、人財派遣・紹介事業)、日本初の大型サイバー演習CYDER(総務省)に参加し、サイバーセキュリティ人材育成のためのITSSを参考にしたレベル定義と、スキル項目に準じた研修を構築。後の経団連・人材定義レファレンスの基となる。2016年にアライドテレシスグループに事業転売(M&A)。2000-2006 NACSE Japan株式会社 代表取締役(アライドテレシス100%子会社のIT教育会社)、ベンダーニュートラルなネットワーク技術者資格の日本市場展開。1995年、日本で初めてNetScapeを販売。

現在の仕事についた経緯

「サイバー攻撃の脅威から、中小企業が自衛できる仕組みを普及させたい」
これこそ、私が事業を起こした理由です。
ところで、サイバーセキュリティの分野において「日本が他の先進国から、どのような扱いを受けているか」ご存じですか?
「国家間機密情報の扱い」という観点で見ると、我が国は「サイバーセキュリティ後進国」と認知されています。これは、他の先進国と比較して「軍のサイバーセキュリティ配属人数が少なすぎること」からも明らかです。
なぜ、このような差が生まれてしまったのか?
それは、サイバー攻撃への対策を「国民の資産を守るための国策」と定義して、国全体を動かす仕組みが日本にないためです。「政府は民間会社の業務を圧迫してはならない」というルールに縛られ、ドラステックに各省庁や官民の枠を越えた活動を行うことができないのです。
では、国が国民の資産を守れないのならば、「誰が」国民の資産を守るのでしょうか?
それは、「私達自身」です。
個人・会社・所属団体単位で自衛するしかありません。
未だに日本では、「サイバーセキュリティは大企業だけのもの」という認識があります。
実際、国内のサイバーセキュリティ業務に関する費用は非常に高額で、中小企業が簡単に手を出せる金額とは到底思えません。ただ、世界に目を向ければ「安価にサイバー攻撃から身を守るためのツールがある」ということもまた事実なのです。
この事実に着目し、まず「価格の壁」を壊して「低価格・高品質なサイバーセキュリティサービス」を普及させます。

仕事へのこだわり

「市場トレンドが次に向かう先は一体どこなのか?」この問いに真摯に向き合うこと。
私が日々、業務に関わる中で最も大切にしていることです。
これは「私自身の過去の失敗」から由来しています。
私が初めて就職した某大手電機メーカー。そこで言われた言葉は、「良いモノ作りを極めれば、将来は安泰」でした。
当時、時代は大型通信機器のための仕組みであるOSIからイーサーネット(LAN端末)への移行期。大型通信機器の組み込みエンジニアリング業務に携わっていた私は、他の同僚と同じようにイーサネットについてこう考えていました。
「こんないい加減な通信の仕組みが、絶対に流行るハズがない」
しかし、結果は真逆でした。
3年も経たないうちに、市場は米国製の安価なイーサネット機器で溢れていました。既にIT市場では、「信頼性よりも低価格で機器を提供できること」が製品を選ぶ主軸となっていたのです。
私は安易な思い込みによって、チャンスを失ったと後から気づきました。「この失敗を繰り返したくない」という想いが、今の私の根底には流れています。
このような想いが行動原理にあるため「リスクを恐れず未来のチャンスを掴みにいく」姿勢で挑んでいます。社名に「未来」という言葉を含めたのもこれが理由です。
正直、楽しさと同時に危なさも付き纏うのですが、上手く切り盛りする事が重要と感じています。
自分や大切な仲間を倒れさせてしまうわけにはいきませんので。
また、お客様や社員を含む関係者の方に「真心・感謝の念を持って対応」することを忘れないようにしています。
やはり「私一人でできることは、限られている」のが現実ですから…。

若者へのメッセージ

現代日本のIT業界の失態を招いたのは、我々シニア世代の責任です。
私は多くの失敗をし、多くの失敗も自身で経験してきています。
これらの失敗事例を、若い皆様にメッセージ・アウトしていくことが我々の責務と思っております。若い方の御要望があれば、喜んで失敗事例も伝えていきたいと思います。
それと同時に、若い皆様にはぜひ「日本のIT業界の捲土重来」を実現してもらいたいと心から願っています。
最後になりますが、私からこれから挑戦する若い皆様に伝えたいことがあります。
「あなたがやろうとしている事業は、どのような手順を踏めば世界一になれますか?」
「そしてそこには、世界のお客様の笑顔が見えますか?」
このことを常に考え続けて挑戦することで、「日本を飛び越え、世界に名を馳すアントレプレナー」になれるかもしれません。
未来ある若い皆様のことを心から応援しております。