INTERVIEW
KAWASE MAKOTO

河瀬誠

MK&Associates 代表 https://www.mkandassociates.jp/

略歴

東京大学工学部卒業。ボストン大学経営大学院理学修士および経営学修士(MBA)修了。素材企業に就職後、A.T.カーニーにて金融・通信業界のコンサルティングを担当。その後ソフトバンク・グループにて新規事業開発を担当。コンサルティング会社ICMGを経て、現職。著書に『経営戦略ワークブック』『戦略思考コンプリートブック』『新事業開発スタートブック』『海外戦略ワークブック』(日本実業出版社)『戦略思考のすすめ』(講談社現代新書)『マンガでやさしくわかる問題解決』『課題解決のレシピ』(日本能率協会)などがある。

-現在の仕事についた経緯-

30年以上前、最初に就職したのは大手製造業でした。
当時の理系学生は就職活動をせず、学科の指定する会社に行くのが普通でした。その会社で留学させていただいたのを機に外資系コンサル会社(A.T.カーニー)に転職しました。
その後にソフトバンクで、インターネット産業の最先端を担当したのですが、その当時にコンサル会社の元上司から「空き時間に企業幹部研修を手伝ってくれ」と言われて現在の仕事を「副業」で始めました。
次第にそうした依頼が増えて、現在は独立し経営人材育成や新規事業創造を本業としています。

-仕事へのこだわり-

私はMBAを取得し、外資系の戦略コンサルタント会社では、数々の戦略検討を担当しました。しかし、MBAを持つ(現役および元)コンサルタントは、それこそ数千名単位でいます。
私の仕事へのこだわりは、むしろ別のところにあります。
私の最初の就職先は日本の大企業でした。全く肌に合わなかったのですが、大企業がもつ現場の真面目さや強さを体感しましたし、製造や生産管理といった技術やプロセスも体験として理解できました。なによりも大企業を動かす「暗黙知的な力学」は経験無しに知ることはできません。
また、ソフトバンクで体験した「ダイナミックな新規事業起ち上げ」は、外部のコンサルタントが唱える理屈とは全く違うものだということを知りました。
きれいな理屈や提言にとどまらず、ダイナミックな戦略実践や新規事業の起ち上げを、日本の大企業の強みや力学を踏まえた上でどう組み込むか、実効力を備えた具体的な施策を顧客と一緒に考え、一緒に実現させていきます。その活動を通じて「経営人材の育成」を図ります。
おかげさまで弊社は、金融機関、総合商社、総合電機、情報通信、自動車、重化学工業、物流企業といった幅広い業種で、日本を代表する会社を顧客としています。

-若者へのメッセージ-

現在はコンサル会社への転職は「勝ち組」に見えるかもしれませんが、当時は外資系企業やコンサル会社の知名度はとても低く、また終身雇用を外れる転職など全くの「負け組」扱いでした。
また、10年近く日本企業や製造現場でさまざまな経験をしたことは、コンサルタントとして回り道ですが、それが今の差別化要因になっています。そして副業で始めた仕事が、今の本業になっています。
キャリア開発に「計画された偶発性(プランド・ハプンタンス)」という理論があります。
計画的にキャリアを求めるよりも、自らの経験を広げ、興味あることにアンテナを立て、チャンスを掴むことこそが、自分らしいキャリアを創り出すという理論です。
人生100年時代、今後は50歳頃から充実したキャリアが開ける、ということが普通になってくるはず。若い皆様は、直線的なキャリアばかりに拘らず、まずは自分の経験を広げ、新しいことにいろいろとチャレンジしていただきたいと思います。