INTERVIEW
KANEMOTO TAKASHI

金本貴志

株式会社Kannade 代表取締役 https://kannade.co.jp/

略歴

株式会社Kannade代表。株式会社カルテットコミュニケーションズ元創業CTO。同社では8年間で売上規模5000万円から27億円、従業員数2名から60名という急成長に経営者として貢献。ゼロから自社サービスとその開発組織を立ち上げる。個人としても技術カンファレンス等での登壇多数。副著に「基本からしっかり学ぶ Symfony2入門」。現在は株式会社KannadeにてWebシステムの開発や社外CTO/技術顧問業務を中心に活動中。

現在の仕事についた経緯

大学でコンピュータ科学を学んで以来、ずっとプログラマを生業にしてきました。
新卒で入社した大手ITメーカーでは社会人・職業プログラマとしての基礎を教わりましたが、大企業での働き方が肌に合わず、友人が立ち上げたベンチャー企業に役員として転職しました。
そこでの仕事の軸は自社で展開するWebサービスの開発・運用で、エンジニア組織の組成・採用・マネジメントなどにも注力しました。おかげさまで会社は急速に成長し、それと同時に、自分で手を動かすような仕事は完全に手放してマネジメントに専念せざるを得なくなっていきました。
もう一度プログラマとしてコードを書いてご飯を食べていきたい、そう強く思うようになり、独立して現在に至ります。

仕事へのこだわり

起業家っぽい経歴ですがまったく起業家気質ではなく、貧しい考えだと思われるかもしれませんが、個人的には仕事はあくまで生活の糧を得るための活動だと割り切っているところがあります。その上で、「どうせやらないといけないなら、できる限り楽に楽しく」ということを常に考えています。
過去に重度のうつ病を患ったことがあり、普通に何事もなく平穏無事に生きていられることこそが至上の幸せだと考えるようになったことが大きいかもしれません。世界を変えたり何かを成し遂げたり何者かになったりすることにあまり興味がなく、自身の心が日々平穏であることこそが幸せであり、そのためにはどんなふうに仕事に向き合うのがよいか、というスタンスでいます。
実際に心の平穏を保つために ①仕事をして必要なだけのお金を稼ぐ ②仕事自体を楽に楽しくする をどうやって両立させているかというと、一言で言えば「得意なことを仕事にして、効率よくお金を稼ぐ」です。字面だけ見ると何ともドライで味気のない仕事観に見えますが、結構大事なことだと思っています。
よく「好きなことを仕事にできるのは幸せ」と言われますが、私は「好きなこと」よりも「得意なこと」を仕事にするほうが幸せになりやすいと考えています。いくら好きなことでも、掛けた時間にまったく見合わない報酬(お金や成果などの満足感)しか得られない状態はとても辛いものです。もしそれが長く続けば、好きだったことを嫌いになってしまう可能性すらあるでしょう。得意なことなら、少なくとも報酬を得ることに対するエネルギー効率は高いので、仕事を通して心を擦り減らす心配はありません。
また、得意なことでお客さんが喜んでくれたり、満足のいく報酬が得られたりすれば、自然とそれが好きなことになっていくと思います。「好きこそ物の上手なれ」と言いますが、むしろ「上手な物なら好きになる」というわけです。
もう少し具体的に、日々の仕事の中で意識していることを1つ挙げておくなら、「自分を安売りしないことと、それでもなお安いと思ってもらえるような仕事をすること」です。
プロとしての自覚を持つという意味でも、自分の仕事に対して正当な対価を要求することはとても大切です。一方で、そこにしか意識が向いていないと、長期的にはお客さんから求めてもらえなくなってしまう。なので、それだけの金額を請求してもなお、お客さんに安いと思ってもらえるような質の高い仕事をする、ということを常に心掛けています。
その値付けを自信を持って行うには、自分の市場価値を正確に把握していることが必要です。その意味でも、自分の得手不得手には常に自覚的であるようにしていますし、世の中のニーズに敏感にキャッチアップして、自分が得意かつニーズがありそうな領域でコツコツと研鑽を積み重ねています。

若者へのメッセージ

仕事で評価されるコツは、ズバリ「上司の仕事を奪いに行く」ことです。(フリーランスや起業家の方なら、上司を「顧客」や「仕事関係者」と読み替えてください)
①「どうしたらいいですか?」 よりも
②「Aで進めてもいいですか?」 よりも
③「A、B、Cの選択肢があり得ると思うんですが、◯◯という理由でAが最適だと考えています。Aで進めてもいいですか?」という仕事の進め方をされるとよいと思います。
繰り返しになりますが、ポイントは「上司の仕事を奪っているかどうか」です。
①はどうするべきかを考えるという自分の仕事を上司に押し付けているので残念ながら論外です。
②は自分でAを選んで提案できているのは良いのですが、上司としては「A以外に選択肢はなかったのかな?」「ちゃんと考え抜いて選んでくれたのかな?」と不安になり、結局「もっと良い選択肢はないか」と上司が考えることになるので、まだ奪いきれていません。
③なら、上司としては「なるほど、確かにその理屈ならAが妥当だな」となり、それ以上何も考えずに「YES」と言うだけで済みます。まさに、上司の仕事を奪っていますね。
ちなみに、④「Aでやっておきました!」というパターンもあって、これは一見主体的で良さそうに見えるのですが、万一Aが最適解でなかった場合に、上司に火消しという余計な(かつ往々にして非常に面倒な)仕事をさせることになり、総合的な期待値としてはマイナスです。与えられた責任範囲を超えることは勝手にやらないようにしましょう。(③なら、もしAが最適解でなくても大きなマイナスは発生しません。)
こんな感じで普段から上司の仕事を奪っていれば、信頼貯金が貯まって、より重要な仕事をどんどん任せてもらえるようになると思います。ぜひ試してみてください!