INTERVIEW
ISHIKAWA KYOKO

石川恭子

株式会社yui 代表取締役 http://光雲庵.tokyo/

略歴

母を師匠として茶道歴30年。現在は、裏千家茶道助教授(石川宗恭)。結婚後は、夫と二人の子供と共に母に師事する。2017年に東京 恵比寿に「光雲庵」を設立。裏千家の茶道を正しく伝えること、心の交流の大切さを伝えることを目標としている。気軽に茶道を日常に取り入れ、暮らしがより豊かに広がる提案として「茶箱」と「茶箱点前」を取り入れたクラスも開講。茶道イベント主催、茶道監修、茶道関連商品開発等を行う。エステ専門誌「エステBプラン」に「石川恭子のBEAUTY-TALK&茶道に学ぶおもてなし」連載中。2019年7月号 光文社「HERS」光雲庵掲載。2022年10月、TBSドラマ「クロサギ」茶道監修。

仕事へのこだわり

私は、世界に誇れる伝統文化である「茶道」を正しく継承し、その素晴らしさを多くの方に知って頂くことを目的として活動しています。
「亭主がお茶を入れ、客がそれを頂く」そんな亭主と客が交わる場を、お互いがより心地よく交われるようにと、利休居士の時代から四百年以上かけて作り上げられた「茶道」は、人と人とが気持ちよく交わるための交流の作法であると言われています。
茶道の真髄である「和敬清寂」(人を敬って和み。清く何事にも動じない静かな心)という禅語の精神のもと、茶室は五感のすべてで気持ちよく感じられるように「おもてなし」の工夫を凝らして客人をお迎えします。
茶道の所作は、そのひと時を和やかに過ごすための思いやりの心や、細やかな気配りが配慮されていると同時に、無駄のない美しい所作が身につくように考えられた合理的で自然な約束ごとです。
稽古を重ねていくことで、自然に美しい所作が身につくだけでなく、感性が磨かれて焼物や着物や書など様々な分野への興味が拡がっていきます。
季節感を大切にして、日々の暮らしの中に美を見出し敬い尊ぶ心を養い、様々な興味を追求していくことも、生涯の楽しみとなり豊かな人生に繋がると考えています。
そんな素晴らしい茶道を多くの方に知って頂きたいと思い活動する中で、茶道に興味はあるけれども「どんなお道具が必要なのかわからない」または、現代の住宅事情として「茶室を設けることが難しい」といったお声を頂くことがあり、そういった問題の解決方法の一つとして「茶箱」という茶道具を提案させて頂いています。
「茶箱」とは、利休居士の時代から旅行用・携帯用として使われていた、抹茶を点てるための最小限の道具一式がコンパクトに収められている箱のことです。
「茶箱」があれば、お茶室が無くても、季節のしつらえや特別な道具を用意しなくても、和でも洋でも自由に本格的な茶道を楽しむことが出来ます。
自宅リビングは勿論のこと、公園やキャンプに持参したりとその楽しみ方は千差万別。
好きな場所で、茶箱の中から次々と茶道具を取り出してお茶を点てて頂くだけでも、充分楽しむことはできますが、更なるご興味を持たれた方には「茶箱点前」(茶箱を使ってお茶を点てること)について知って頂きたいと考え、茶箱クラスを設けたり、茶箱を使用した様々なイベントを開催しております。

若者へのメッセージ

グローバル化が進展する今日において、総合芸術である茶道を学び、日本人としてのアイデンティティーを再認識したうえで世界に接することは大変有益です。
仏教の瞑想法をベースに編み出されたメンタルケアである「マインドフルネス」は、脳を活性化させ、ストレスをたまりにくくしたり、仕事のパフォーマンスを上げる効果があるとして、医学やビジネスの世界で大きな注目を集めIT企業を中心に社員研修に取り入れる会社も増えています。
心を「今」に向けたマインドフルネスの状態に到達する手段として、めい想等が行われますが、「今ここ」に集中する茶道そのものが、マインドフルネスであると考えています。
多くの情報に溢れ、慌ただしく過ぎていく毎日の中で、過去や未来のことを考えて、「心ここにあらず」の状態を続けるのではなく、まずは「今ここ」に意識を向けて自分と向き合う事、五感を研ぎ澄ます事を少しでも取り入れることが、自分らしい生き方に繋がると考えています。