INTERVIEW
IKEDA NORIYUKI

池田訓之

株式会社和想 代表取締役 https://store.wasoukan.com/

略歴

1985年、同志社大学法学部卒。卒業後10年間、弁護士を目指し司法試験にチャレンジするもかなわず。33歳の時に人生の出直しを誓い、呉服業界に転身。10年間の京都の着物店での修行を経て、2005年鳥取市にて独立、株式会社和想(屋号和想館)を設立。その後鳥取から島根、山口へと6店舗を展開。一方で2015年に業界初の海外での着物専門店舗をロンドンにオープン。2012年からは、和想館に併設して和カフェ事業・Cafe186を5店舗展開。コロナ禍の2023年現在は、国内の鳥取、島根にて5店舗の和想館&Cafe186とオンラインショッピングサイトを展開中。着物業界に入って以来、着物新聞発行(27年)、独立後は和想館各店舗での定期講演会(17年)、山陰地方のAMとFMラジオ局(BSS山陰&エフエム山陰)での月2回ずつの質問コーナー(15年)、YouTubeを通じて(2年)、和の心の伝道をライフワークとして続けている。著書:「君よ知るや着物の国」(幻冬舎2022年)。

現在の仕事についた経緯

司法試験の10回目の合格発表を見に行ったとき掲示板に自分の名前はありませんでしたが、「この道での修業は終わった、次の道へ進みなさい」という声が聞こえました。それで、「どんな仕事でもいい、働いて社会のお役に立とう」と吹っ切れました。
そして就職活動を始めるも、10年間バイトしかしておらず経歴が白紙の履歴書を手渡すと、全部断られました。
そんな折、家業の着物屋を継いでいた友人と出会い、「うちで働かないか」と声をかけてもらいました。着物なんて誰も着ていないし全く興味なし、しかもその着物屋は京都北部丹後半島という田舎にありました。
なんでこんな田舎で化石のようなものを売らないかんのか!と思いましたが、他に行く宛は無し。これは運命だと思い、着物の道を進むことにしました。

仕事へのこだわり

*常に「動機善なりや」ということ
大学卒業が近づき、就職という人生問題と対面したときに、たまたまインド独立の父ガンジーの人生を描いた「ガンジー」という映画を見ました。痛く感動し、ガンジーは弁護士だったので、自分も弁護士になろうと決意しました。
それで、結局就職活動は一切せずに、家を出て一人で浪人生活を始めました。当時の私は、企業で働くことはもっぱら金儲けを目的とする卑しい仕事、弁護士は社会正義を実現する尊い仕事、と考えていました。
一人で大学の図書館に忍び込み一日中勉強する孤独な毎日、思うように結果が出ない自分を奮い立たせるために色んな本を読みました。一番元気づけられた本の一つが、商売の神様と呼ばれた松下電器の創業者松下幸之助氏の本でした。商売は卑しい仕事と見下げていた自分が商売人の本に感動し、私は自分の考えの間違いに気づきました。松下氏の本にはどうやったら儲かりますよ、なんていう目先の利益の話は書かれていません。いかに自らの商売を通じて世の中を良くするかをずっと説かれていました。
私は「仕事に良し悪しなんてないんだ。商売でも社会のお役にたてるやり方はあるし、弁護士でも目先の利益をむさぼり社会秩序を乱している者もいる。大事なのは、目の前の仕事にどういう気持ちで取り組むかということなんだ。」と、10年目に気づいて、どんな仕事でもいい、働いて社会のお役に立とうと転身を誓いました。そして家業の着物屋をついでいた友人が声をかけてくれて、新たに着物の道に転身しました。
あれから28年、動機善なりか、常に目の前の仕事を社会のお役に立つためという利他の心で(自分さえ潤えばいいという私心ではなくて)務めているか、ということを大切にしています。

若者へのメッセージ

*嵐に立ち向かっていくのが至福の人生
禅問答で、「嵐に出会ったときにどうすればよいか」という問いがあるそうです。答えは「嵐に向かって進んでいけ」とのこと。嵐の中心まで行くと、台風の目があり嵐は止む。人生の困難から逃げるな、挑み続けろ、という教えだそうです。
人は何のために生まれてくるのか?目の前に起こることは偶然なのか必然なのか?
孤独な10年の浪人生活で考え続けました。答えは、人は進化向上するために生まれてきた、そして進化向上するために、適度の高さのハードルが必然的に適切なタイミングで現れ続ける、ということです。なぜなら、宇宙は誕生以来進化向上を続けていて、我々人類はその宇宙の進化向上のエネルギーを頂いて生きているから。また宇宙に存在するあらゆる事象は完璧な精度で存在活動していて、偶然で成り立っているとは到底思えないからです。
人生の中で一番多くの時間を費やすのが仕事、だから仕事は人生そのものです。進化向上していくために、仕事上では次々といろんなハードルや壁が待ち受けているということです。逃げたら、逃げた道でまた同じハードルが現れるだけ。職場は、実は大宇宙が自分を成長させるために用意してくれた進化の道場です。必ず壁は超えられるはず。そして超えた瞬間にはこの上ない喜びが準備されています。
目の前に現れる壁に感謝して挑み続けろ、何も迷うことはない!