INTERVIEW
HARASHIMA HIROSHI

原島洋

株式会社ウェブマスターズ 代表取締役 https://www.webmasters.co.jp/

略歴

1967年に青梅に生まれ、育つ。
1992年に東京大学工学部を卒業し、
大手Sierで金融オンラインシステム担当に配属され、社会インフラの品質と運営を学ぶ。

1996年、学生時代のつながりから、ウェブ業界へ転身。
まだ商用解禁されたばかりのインターネットをビジネス活用する普及活動を行いながら、
初めてウェブサイトを持つ企業の構築支援を続ける。
自身が所属した会社組織の離合集散も併せて経験し、リーダーの重要性を認識。

2000年、経営の視点を持ちウェブマスターを支援するというコンセプトで、
合資会社ウェブマスターズを設立、代表に就任。
2002年に株式会社ウェブマスターズへ移行。
多数のウェブサイトやウェブシステムの構築に携わる。
コミュニケーションの成否に関心を持ち、「伝わるサイト」の構築を目指す。

2003年、システムアナリスト(高度情報処理技術者/経済産業省認定資格)合格。
2005年、中小企業診断士(国家資格)合格。

-現在の仕事についた経緯-

インターネットが流行り始めた90年代中頃に、
学生時代の友人達が始めた会社に誘われたことがきっかけです。

試行錯誤をしながら新しいものを作っていく、
新しい世界が創られていくプロセスに参加する体験がとても楽しく、また、
喜ばれる/叱られるといったお客様の反応を直に感じられる立ち位置が嬉しく、
ここに賭けてみることにしました。

歴史があり大規模社会インフラでもある金融システムとは真逆で、
新しかったインターネットの世界ではマニュアルがないどころか、
教科書も前例も乏しかったのですが、
それは自分のアイディアを実行する余地が無限にあるということです。
また、社会から見れば小さな存在だったので、失敗にも寛容で、
いくらでも実験的なチャレンジができました。

-仕事へのこだわり-

【新しいこと/もっと良いやり方】

自分の直感を信じ、考えを試してみます。
先生の指示と違う、教科書にない、といった理由では諦めません。

失敗はありますよ。
でも、自分の考えと意志で実行した失敗には「学び」があります。
その考えに至るまでの経緯を知っているので、分解して検証できます。

調べ足りなかったのか、調べたことが間違っていたのか、
実験回数が少なすぎたのか、アドバイスを求める人を間違えたのか。
その過程で経験値が上がり、直観力が鍛えられます。

失敗は成功への通過点です。
他人の指示や常識に従った失敗は、責任転嫁が可能でそれらが手に入りません。

【全体概要から細部へ向けて作る】

本を作るとします。
テーマを決めて、目次を作り、流れを構成し、分量を想定し個々の項目に割り振り…
と全体像から固めます。
目次も、大項目から始めて、中項目、小項目へ進みます。
これを済ませた後に、中身を書き始めます。

これがプロが専門分野で見せる仕事です。

全体で必要な時間はどのくらいか、今はどこにいるのか、ピークはどこか、
順調かテコ入れが必要か、どこに落とし穴があるか、欠けているものはないか、
それらを把握できているのがプロです。

いきなり書き始めては、これができません。
このために、日頃からの試行錯誤が有効です。
一見すると矛盾ですが、脇道や裏道を知っていることが、
プロが不確実な現実に自信をもって対応する基盤です。

【世界観】

限られたパイを奪い合うか、パイの総量を増やすか。
私は後者のために生きたいです。

奪い合えば貧しくなる人が出ます。
総量を増やせば、分配次第で全員が潤います。

現状を奪い合いの世界と認識している人も多いですが、
実際に間違っているわけでもなく、
致命傷を負わないために必要な護身でもありますね。

でも、それをそのまま未来に継がせたくない。
払拭は無理でも改善させて渡したい。

目の前の人が喜んでくれてこそ自分の存在意義が感じられます。
周りの人が幸せであってこそ自分も幸せになれます。
自分の手の届く範囲でそういう仕組みを作って、少しでも広げたいです。

突然にブレイクするかもしれないじゃないですか。
コロナになってテレワークが広まったように。

-若者へのメッセージ-

【センサーを磨こう】

仕事は「起点」を受け「処理」を行い成果を出します。
学校では主に「処理」の能力が磨かれます。
調べる、集める、まとめる等。
マニュアルが普及すると、高止まりします。

「起点」はワクワクや危機の予兆をセンサーが感知することで、
学校であまり磨かれないですね。
試験では与件として与えられてしまいますし。
なので、起点は磨いている人と磨いていない人との差が大きいです。

これがいま重要だと感じます。

いつも通りの日常で未来のリスクとなる小さな異常を感じ取る、
対岸で起きている新しい技術や動きから飛躍を想像する。
起点に差があって処理が同じなら、成果に差をつけるのは起点ですね。

高度成長期の遺産では食えなくなった現代で、
問題意識や課題発見の力が求められる背景です。

【自分の得意はどこにある?】

私は、高校時代に理科が好きで古典が嫌いだったので理系を選びましたが、
いまは文系だと思っています。

工学部では珍しく好奇心から教員免許を取り、
社会人になってからは組織の意思決定やその背景となる文化に興味を惹かれて、
いまはその文化的背景になっている近現代史の本をとても面白く読んでいます。
私の日常業務は文理(業務とシステム)の橋渡しとも言えます。

そのためにできること、そのひとつは好奇心を追及すること。
それから、思い通りに行かないことも縁と思って食わず嫌いをせずに付き合うこと。

自分の知らなかった自分の能力や好みに出会うことで可能性が広がり、
それ自体が楽しくなりますよ。