INTERVIEW
FUSE KYOSUKE

布施恭祐

andAパートナーズ合同会社 代表社員 https://www.anda-ptr.com/

略歴

北海道出身。早稲田大学大学院会計研究科修了後、大手監査法人入所。上場企業等の財務諸表監査、内部統制監査やIPO準備企業に対するアドバイザリー・サービス、M&Aに係る財務DD、国内上場企業のグループ・ガバナンスに関するアドバイザリー・サービス等に従事。2020年7月、布施恭祐公認会計士・中小企業診断士事務所を開業、2023年8月に事業を引継ぐ形で&A Partnersを設立し代表社員に就任。上場企業に対する決算・内部統制支援、J-SOX評価・改善支援、M&Aに係る財務DDなど、財務・会計を中心に幅広くサービスを提供している。公認会計士、税理士、中小企業診断士、上級IPO実務士。

-現在の仕事についた経緯-

大学院在学中に公認会計士試験に合格後、まずは公認会計士の基本である監査をやろうと思い、大手の監査法人に入所し会計監査業務に従事しました。
会計監査という仕事は、早いうちから経理・決算のために必要な経営上の機密情報に触れることができ、また、自分よりもずっと長い経験を持つ経理部長等とお話ができるので、とても良い経験になりました。
一方で、監査人という立場上、クライアントである企業に対してのサービス提供が制限されることも少なくないため、もっと様々な面で企業への支援をしたいと考え、独立しました。
現在は、同じ志を持つ公認会計士の仲間と&A Partnersを設立し、財務・会計や内部統制といった切り口から、企業経営を支援するため奮闘しています。

-仕事へのこだわり-

新人の頃から常に意識していることは「プロとして恥ずかしくない仕事をする」ことです。
今から思えばとても生意気な新人・若手だったと思いますが、新人のときから、公認会計士というプロフェッショナルの1人としてクライアントと対峙するんだという意気込みを持って仕事をしていました。もちろん上手くいかないこともたくさんありましたし、きちんと調べて考え、完璧だと思って指摘をしにいったはずなのにクライアントのほうが一枚上手だったりということも数多く経験し、プロフェッショナルとは程遠いなと思うことばかりでしたが、プロ意識をもって仕事をした結果としてのミスが自分を育ててくれたのだと感じています。
また、自分が感じた違和感を大切にし、きちんと解消するようにしています。ふと「何かおかしくないか?」と思ったことは、ただの思い過ごしのこともありますが、後になって「やっぱりおかしかった」となることも多々あります。見過ごしたときに後悔しないためにも、違和感があったときにそれを解消することを大切にしています。
独立した現在でも、プロとしての仕事はどうあるべきかを常に考えて仕事をしています。
私が考える「プロしての仕事」は、課題の「核心」を適切に見抜き、それを解決することです。会計基準や監査基準の改正だけでなく、サスティナビリティや人的資本といった非財務領域に関する開示・報告の拡充であったり、情報セキュリティやAIの進化への対応など、学ぶべきことは多岐にわたりますが、企業経営の課題の「核心」は大きく変わらないと思います。
学ぶべきものはきちんと学ばないといけませんが、情報に溺れず、「核心」が何なのかを常に考えるようにしないといけないと常に自省しています。

-若者へのメッセージ-

今の時代は、職業専門家にとっても非常に難しい時代だと思います。専門知識はインターネットで簡単に調べることができ、また、ChatGPTのような生成AIがもっともらしい回答をしてくれるため、知識は専門家にとっての武器ではなくなりつつあります。
その中で「プロとしての」仕事にとって重要なことは、たくさんの知識をつけることではなく、その知識をどのように活用するかを考え抜く思考力です。そして、思考力を磨くためには、仮説と検証というプロセスをできるだけ多く積み重ねることが必要だと思います。
私自身も、新人のころから多くの失敗をしてきましたが、常に「この問題の本質は何か」「クライアントにとってこの規定をどう適用し運用するのが最適なのか」を考え抜き、自分なりの仮説をもって仕事に向かっていたことで、失敗を単なる失敗とせず学びにつなげられてきたと思っています。
たくさんの失敗をすることはとても良い経験だと思いますが、その経験からの学びの質をより高いものにするためには、きちんと考え仮説を持つことがとても重要だと思います。
一方で、ただ考えているだけでは、仮説は仮説のままになります。これ以上考えてもどうにもならないというところで一歩踏み出す勇気も同じくらい大切です。
若いうちの失敗は許してもらえることが多いですので、あまり恐れずにチャレンジしてみましょう。それが、AIに負けない「プロとしての」思考力につながると思います。