INTERVIEW
FUKUDA YASUMASA

福田康正

合同会社おかげさん介護 代表 https://www.okage-kaigo.com/

略歴

兵庫県で高校を卒業し、京都の介護専門学校で介護を学ぶ。その後、京都にある高齢者関係の社会福祉法人にて15年勤める。2019年、35歳の時におかげさん介護を設立。翌2020年4月にデイサービスおかげさん、2022年4月に訪問介護おかげさんをオープンする。

-現在の仕事についた経緯-

かつての恩師が養護学校へ移られた時に見学へ行ったことがきっかけです。支援を要する人たちと関わる姿に魅力を感じたことで、自分も誰かの支援に携わる仕事をしたいと思うようになりました。その後は特養施設や認知症の方専門のデイサービスなどで働きました。
自分が起業しようと思った大きなきっかけは、施設で暮らす高齢者と自分の家で暮らす高齢者の双方と関わる中で、自分の家で暮らす高齢者は様々な困りごとやリスクを抱えながらも自分らしい生活、我儘な生活をされていることに面白さを感じたためです。
自分の培ってきた知識や技術を、今後は「いつまでも自分の暮らしたい場所で暮らし続ける」ことが出来る高齢者を増やすことに注いでいきたいと決めたことから、起業に向けて動き始めました。

-仕事へのこだわり-

介護の仕事を続ける中で考え方やスタイルは変化してきました。はじめは「きちっと丁寧に仕事する」ことから始まり、「認知症ケアの質を高める」ことに力を入れた時期もありました。現在は「支援の対象として見るのではなく、ただの人と人として付き合い続ける」に辿り着いています。「専門職として」というような気負いがなくなり、脱力状態で自然体というのが今の姿です。それと同時に思いや熱さ等、秘めたるものは強くなっているように感じます。
高齢者は介助が必要になったり物忘れが激しくなったりします。でも働く人がその人のことを「お世話される人」と捉えてしまった時点で、ただの「介助する人」と「介助される人」という関係になり、この仕事の魅力や楽しさを感じられなくなります。
誰にでも年齢関係なく他人と違う性格や特徴等があります。お年寄りが出来なくなった部分を考える以前に、相手をそのまま受け入れることが大切だと思います。「今の自分に出来る役割を通して人の役に立つ」ことや「他者と感謝し合える場面を通して心の繋がりをつくる」こと、これが「おかげさん」の精神です。誰もが自然体に過ごしながらも大切な存在として認められる場所を作っています。
自分にとって好都合な人ばかりではない、嫌なこともある、でもそれすらも「おかげさん」と思えるような心豊かな場所を作ることが今のこだわりになります。「介護」は暗いイメージがあるかもしれませんが、日々人と人が感情を揺さぶりながら響き合う、他の仕事にはなかなか無い温かい仕事です。

-若者へのメッセージ-

若い人にも、自分の好きなところや嫌いなところ、得意なことや苦手なことなどあると思います。自分の苦手なところや弱みに対して「なんとかしなければ」と焦ったり落ち込んだりすることもあるかもしれません。若い方々に伝えるなら「弱みを直すん諦めよ!頑張ってもそんな変わらんで!」ということです。
介護は人と人。お年寄りだけが弱みがあるのではなくみんなにある。互いの弱みは補い合えばいいですし隠すものではないと思います。良いも悪いもそのまま認め合えばいいのです。
「介護」と聞くと、なんとなくもてなしたり、介助したりをイメージされるかもしれませんが、身体機能が低下したり認知症になったりしながらも、その人が最期まで心を豊かに生きていけるよう支援することが仕事だと思っています。
安心して認め合える場があれば、本来ネガティブな「老い」をもポジティブに笑い飛ばせます。「老い」は誰もが通る道。それならば、明るく老いていける社会が必要です。大変なことも含め、魅力のある介護の仕事がもっと選ばれる職業になってほしいと願っています。