INTERVIEW
AKITA DAISUKE

秋田大介

株式会社イマゴト 代表取締役 https://ima-goto.com/

略歴

大阪大学大学院環境工学専攻で修士を取得。新卒で神戸市役所に入庁、都市計画・まちづくり・環境・エネルギーなどを専門に21年間勤務。在職中に副業でNPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクトや一般社団法人アスミーを立ち上げて活動。また、Kobe Mural Art Projectなど地域課題解決に取り組む民間主導のプロジェクトを複数立ち上げて推進。2023年3月に神戸市役所を退職し、独立起業。産官学民の連携事業や協働事業をコーディネートしたり、森林保全・資源循環の新しい仕組みをつくったりすることを通して持続可能な社会の構築を目指している。

現在の仕事についた経緯

いま自ら解決したいと思っている社会課題は、国内の森林保全です。林業が成立せず、日常の管理もできていない小規模な私有林が多いため、林業とは異なる新しいビジネスモデルをつくり、森林の持つ公益的な機能(水源涵養機能や地球環境保全機能、土砂災害防止機能、生物多様性保全機能など)を貨幣価値化したいと考えています。
そのために、資金と時間をかける必要があるため、週5日勤務の公務員という安定した職を手放し、これまで蓄積してきた官民連携のノウハウを活かしたコンサルタントやコーディネート業を効率良く行いながら、森林保全の新しい形をつくるチャレンジを行うことにしました。

仕事へのこだわり

中学2年の時に科学雑誌Newtonで「地球クライシス」という特集を読んで、地球が終わってしまうかも!というショックを受けた時から、人生の軸は「持続可能な社会」「地球環境」と定まっていました。持続可能な社会を構築するために最も実現したかったことは水素循環型社会でした。2002年に就職活動をする際も、水素社会が実現できそうな街として神戸市を選び、それを実現するためのツールとして公務員を選びました。
神戸市職員として働いている間もずっと「持続可能な社会」という軸を持って仕事に取り組んできました。今の時代を生きる市民のために働くのが公務員ですが、私は市民という言葉の中に「未来の市民」という概念を含めて、先の世代が幸せに生きられる社会をつくるために今やるべき仕事をしてきました。
担当業務として神戸市の中心部の将来ビジョンを描いた時も、まさにその視点から車社会から脱却するためのビジョンを作成しました。人口減少が進んでいった中でも生き延びることができる街になるように今の世代に少し我慢をしてもらうような50年先の都市計画をつくろうとし、今を生きることを第一とする一部の住民や議員から厳しい反発を食らったこともあります(今でも残念に思っています)。
神戸市を選んだことに間違いはありませんでした。日本で最も早く水素事業に着目し、日本で最も早く水素プロジェクトを動かし始めました。水素社会構築の業務に携われたのはとても幸せでしたが、本当にやりたいと思っていたゼロからイチをつくるフェーズは終わったので、次のチャレンジをすることにしました。
改めて原点に立ち返ったとき、先の世代に希望ある未来を残すために今(イマ)やるべき事(ゴト)がある、という思いからイマゴトという会社を立ち上げ、現在の複雑な社会課題の解決を進めるための産官学民のコーディネートを行うことと、なかなか解決の糸口が見えない林業に適していない個人所有の森林を保全し資源を循環させることに取り組もうと考えました。
独立起業した今でも「持続可能な社会」「地球環境」という人生の軸はぶれていません。

若者へのメッセージ

若い世代は私たちの世代よりも環境に関するリテラシーが圧倒的に高いです。しかし、止まらない地球環境問題や、実際に行動を起こせない大人を見て、諦めてしまっている面もあります。
それは僕らの世代とその上の世代の責任だと思います。いままだ現役のうちにやれることは全部やって、下の世代にかかる負債は少なくしていきたいと思っています。
だけど正直間に合いません。今の若者といわれるみなさんの世代も私たちの世代と同じく、下の世代にツケを回す可能性があります。仕方ないで済ませることなく、やれることをやって欲しいと思っています。「人生楽しんだもん勝ち」とか、「やりたいことをやればいい」という言葉は正直好きじゃありません。特に昭和の大量消費や飽食の時代を生きた人間の価値観はもう不要ですし、それを語る大人は悪影響でしかないと思います(自戒を込めて)。
生きるからには楽しんだほうが良いに決まっていますが、そこに社会的な意義を伴走させることができ、そこに価値を感じられる世代だと信じています。