INTERVIEW
OGASAWARA MASATAKA

小笠原匡隆

法律事務所ZeLo・外国法共同事業 代表弁護士 株式会社LegalOn Technologies 取締役共同創業者 https://zelojapan.com/

略歴

法律事務所ZeLo、代表弁護士。2009年に早稲田大学法学部を三年次で早期卒業、2011年に東京大学法科大学院修了。2012年に弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2013年に森・濱田松本法律事務所入所。2017年に法律事務所ZeLoを創業すると共に、AI契約審査プラットフォームなどを開発する株式会社LegalOn Technologies(旧:株式会社LegalForce)を創業。経済産業省「スタートアップ新市場創出タスクフォース」構成員(2022年4月~)。日本ブロックチェーン協会(JBA)リーガルアドバイザーなどを務める。主な著書に『ルールメイキングの戦略と実務』(商事法務、2021年)など。2023年に「ALB Japan Law Awards 2023 Top 5 Finalist - Managing Partner of the Year」、2022年に「ALB Asia Super 50 TMT Lawyers 2022」に選出される。

-現在の仕事についた経緯-

弁護士になろうと決めたのは、高校時代でした。
祖父が精密機器を造る工場を経営しており、債権者との関係などで苦労する姿を間近で見てきたため、「経営者をサポートする仕事がしたい」という思いがありました。
また、金銭的な制約はありつつも、自分のやりたいと思ったことは、とことんやらせてもらえる自由な環境で育ったため、「自分の力で、自分で決める」ということに面白さを感じていました。これらの理由から、経営者を自分の力と責任でサポートできる職業の弁護士を志しました。

早く優秀な弁護士になりたいという焦燥感から、大学を飛び級で卒業して、東京大学のロースクールに入りました。ストレートで司法試験に合格でき、2013年に国内大手法律事務所に入所しました。
企業法務案件に携わりながら、未来のリーガルサービスについて考える中で、米国でリーガルテックが生まれだしていること、多くの企業家たちと交流し熱量に触れたことなどをきっかけに、「テクノロジーを用いながら、次世代のリーガルサービスを生み出していきたい」という志が芽生えました。

この志を実現すべく、2017年に前職の同僚だった角田望弁護士と共に、法律事務所ZeLo(現:法律事務所ZeLo・外国法共同事業、以下ZeLo)と、AIを用いた契約業務に関するソフトウェアの開発・提供を行う株式会社LegalForce(現:株式会社LegalOn Technologies、以下LegalOn Technologies)を創業しました。
ZeLoは、新しいリーガルサービスを模索しながら成長する企業法務に特化した法律事務所で、2023年8月現在、弁護士・弁理士・司法書士などの専門家46名を含む、総勢約100名にまで規模を拡大しています。
LegalOn Technologiesは、リーガルテックのスタートアップとして、累計で約180億円の資金調達を行い、2023年8月現在、メンバー(従業員・業務委託社員)は600名を超えています。

-仕事へのこだわり-

私の仕事へのこだわりは、「満足を超え、感動を与えられる仕事をする」ことと「リスクがあるからできないではなく、どうすればできるかを突き詰める」ことです。

『満足を超え、感動を与えられるような仕事をする』
法律事務所の業務は、プロフェッショナルによるサービス業です。日本には4万人を超える弁護士がいて、それぞれがサービスを提供しています。
人が中心のサービスであるからこそ、個々のプロフェッショナルが、どのレベル感で仕事をするかがサービスレベルそのものに現れます。そのため、単なる満足ではなく感動を与えるために、目の前の仕事に全力で向き合い、課題解決のために徹底的に考え抜くことが重要だと考えています。
組織全体でも、「Beyond satisfaction/満足を超え、感動を与える仕事をする」を行動原理として掲げて大事にしています。

『リスクがあるからできない、ではなくどうすればできるかを突き詰める』
企業法務弁護士の本質は、経営者に寄り添い、企業が抱える経営課題を法という手段を用いて解決することにあります。経営者は、事業を成長させて沢山の付加価値を世の中に届けたいという思いで企業経営をしています。弁護士は、そのような経営者に寄り添って、企業経営を前進させるために動く、経営者のブレインになる必要があります。
時として、経営者は孤独な状況で経営上の意思決定を下す必要があります。その際に、経営者に対して「あの弁護士が背中を押してくれたから前に進めた」と寄り添った体験を届けることができると、弁護士として本質的な仕事ができたと言えるのではないでしょうか。

また、テクノロジーの発展に伴い、法規制が日々複雑化していることに加え世の中全体のコンプライアンスに対する意識が上がっています。リスクに対して正確な評価ができないと、革新的な新しいサービスは生まれません。本当は斬新で意義のあるビジネスモデルに対しても、リスクの有無・軽重を見誤ると、やらない方がいいという判断で終わってしまうこともあります。一方で、正しくリスクを評価することができれば、リスクを制御する目的で、様々な角度で検討が行われ、そのビジネスが実施できる可能性が生まれます。

私が創業した当初、新しいフィンテックのビジネスモデルを着想し、このモデルが社会を変えると確信していた起業家がいました。彼は、自分のビジネスを実現するために、弁護士の意見書がほしい、と私を訪ねてきました。他の法律事務所からは法的にリスクがあるビジネスモデルには意見書が出せないということで、創業当初の私に話を持ってきたようです。
私は、彼と一緒に必死にスキームを考えて意見書を書き上げました。結果、その意見書をもってベンチャーキャピタルから資金調達に成功し、大きく成長を遂げることができました。その起業家は、自分の志を実現できたことに心底喜んでくれ、数年経った今も盟友のような存在になっています。

リスクがあるからできない、ではなく、どうすればできるのかを突き詰める。こういった姿勢が新しいビジネスを生み、日本全体を活性化させるものと信じています。

-若者へのメッセージ-

『弁護士の本質とは』
企業法務の弁護士の本質とは、経営者に寄り添い、企業が抱える経営課題を法という手段を用いて解決することにあります。弁護士は、自分の力で、自分で責任を負ってクライアントにアドバイスができる、非常にやりがいのある魅力的な仕事です。同時に、そのアドバイスによって経営の方向性が変更される余地もあり、非常に責任の重い仕事でもあります。所属事務所の大小に関わらず、最終的には自分の職業人生や弁護士バッジをかけて仕事をするという意味において違いはありません。
どういう分野を専門にしたいか、どんな分野をやりたいか、といったことは重要ではありますが、それは他の弁護士と比較して、自分がクライアントに対して付加価値を提供するための手段に過ぎない、といったことはよく認識しておく必要があります。

『何を目指すべきか』
学生と話をすると、法という手段で企業が抱える経営課題を解決していくことに面白さを感じる人と、興味のある分野があり、その研究を深めるべく弁護士になりたいと思う人の両方がいます。
前者の発想が強い人は、経営者の意思決定に影響を与えるアドバイスを行う胆力が必要ですが、これは自分の責任で、自分の力で考えて、クライアントに対して直接的にアドバイスができる環境に早くから身を置くことで養われます。また、自分自身も組織経営に携わる機会があれば、経営者の感覚を得ることができるので、より本質に近付くことができる弁護士への近道になると感じています。
後者の発想が強い方は、どちらかというと、同質の案件に集中的に取り組むことができる環境があるかを重視すると、自分にあった成長が早くできるように思います。
社会に出ると、高校や大学でいうところの偏差値のようなものはなくなり、自分にとって何が重要で何を目指したいか、どういう人生を自分の正解と定義するのかが重要になります。どういう人間になりたいのか、といった点は就職先を選ぶ上でよく考えることが重要であると思います。

『ZeLoが与えられる環境』
ZeLoでは、先輩からのレビューを基礎としながらも、若くからチャレンジできる環境を用意しています。「リーガルサービスを変革し、法の創造に寄与し、あらゆる経済活動の法務基盤となる」というビジョンを掲げ、広い市場に向けて成長をしている最中ですので、外に向かって、前向きに成長したいと考えている方にはぴったりな環境だと思います。
何かに興味をもち挑戦するという姿勢があれば、自分に入ってくる情報も素通りせずに吸収することができます。その1日1日の姿勢が積み重なり、数年すると、とてつもない差を生みます。最新のテクノロジーについて興味や関心をもち、その技術や法律を少しずつ追っていたら、気付いたら、かなり若くしてその途の専門性を獲得していた、ということはよくあります。
また、ZeLoは若いうちからクライアントと密に触れ合うことができる環境ですので、経営の意思決定に寄り添うという感覚を肌で感じられます。チャレンジ精神が旺盛で、企業法務の弁護士として本質的に強くなりたい方々の参画をぜひお待ちしています。