平成元年、中途採用でロフテー株式会社に入社。快眠スタジオに配属後、睡眠文化の調査研究業務に従事。睡眠文化研究所の設立にともない研究所に異動し、主任研究員を経て2006年~2009年まで同所長。睡眠文化調査研究や睡眠文化研究企画立案、睡眠文化フォーラムなどのコーディネーションを行う。2006年、睡眠改善インストラクターの認定を受ける。2009年独立後、研究者グループと立ち上げたNPO睡眠文化研究会で事務局長を務める傍ら、睡眠改善インストラクターとして、講演やコラム執筆、パーソナル睡眠改善カウンセリングなどを行っている。
NPO法人 睡眠文化研究会:https://sleepculture.net/ DORM:https://sleepculture.net/dorm/index.html
略歴
-現在の仕事についた経緯-
寝具メーカーの研究所に勤める中で、睡眠を様々な角度から調査研究する活動に携わっていました。睡眠の科学的な研究者だけでなく、人類学、社会学など文化的な視点から研究を行う専門家の方々との連携が多くの学びを与えてくれました。退社後、在籍当時から連携していた研究者の方々と、NPO法人として睡眠文化研究会を立ち上げました。
一方で、睡眠環境を提供する寝具会社に務める人間として、睡眠の科学的な知識を体系的に学ぶ必要性もあり、在籍中に睡眠改善協議会が認定する睡眠改善インストラクターの研修を受けて認定されました。退社後、講演やコラム執筆、パーソナルカウンセリングを行いながら、生活習慣でできる睡眠の改善法を発信しています。
-仕事へのこだわり-
寝具メーカーの研究所で睡眠を文化的に捉える睡眠文化研究をしていたのは、バブル崩壊後、生活者の睡眠への関心がまだ今日ほど高くなかった頃です。
睡眠への科学的なアプローチが主流だった時代に、睡眠を文化的な視点から捉えて研究しました。自分の眠りをより良いもの・豊かなものにするために、まずは睡眠への関心をもってもらうイベントや展覧会などを開催するという方向性の中で、研究者の方々と企業をつなぐコーディネーターの仕事をしてきました。従来の科学的なアプローチを取らず、むしろ文理を超えたテーマとして「睡眠」を捉えようという立ち位置を崩さずキープした活動が、現在にまで続いていると思います。新規事業で、特に手本や先輩たちがいたわけではないですが、当時の上司には恵まれていたと感謝しています。
同時に、企業在籍中に感じていたことは、快眠に貢献しているのは寝具だけではない、これさえあれば快眠できる、というものはないということでした。睡眠改善インストラクターとして認定されたのちに、講演やコラムで快眠法や睡眠環境の整え方をアウトプットする際にも、睡眠の仕組みを分かりやすく解説しながら、生活全体でより良い睡眠を考えるように伝えています。講演やラジオ出演を重ねるにつれて、睡眠はとても個人的な要因が大きく作用するため不特定多数に向けた情報発信の限界を感じ、パーソナル睡眠改善カウンセリングも始めました。
-若者へのメッセージ-
大学での「睡眠文化論」授業を15年近く行っていますが、スタート時から変わらず毎年履修登録は抽選になるほどです。履修動機を聞くと、自身の睡眠をより良いものにしたいからという声もある一方で、睡眠を文化的に捉えることへの興味関心からという割合が高いです。
現代は、多くの情報がネット上から得られます。快眠法・睡眠情報もネット上に溢れています。ただ、その情報は科学的な知見に偏りがあることや、玉石混交であることにも注意が必要です。睡眠は単に知見を知ることだけでなく、自分の身体の声に耳を傾けたり、自分の睡眠を客観的に、相対的に見つめることが大切です。
現代の日本人にとって当たり前の睡眠習慣や睡眠環境が、他の国や地域、あるいは江戸時代以前と比べて、どこがどのように違うか・同じか、その理由や背景を考えることを通じて、未来のより良い睡眠を考えることに繋がると思います。
眠りを考えることは、働き方を考えることとセットです。徹夜自慢や寝ないで頑張ることへの評価のあり方が、日本人の睡眠の背景にあります。若い世代の人たちには、働き方改革が眠り方改革にもつながることを意識してもらいたいですね。