INTERVIEW
MIYAKE TAKAYUKI

三宅貴之

自律学習サカセル 代表 https://sacacell.jp/

略歴

東大寺学園高校から東京大学文科3類へ進学、文学部を卒業。大学入学直後からSAPIX小学部で算数科講師として勤務し、最上位コースを歴任。その後は個別指導塾に移籍し、個々の生徒に応じたスケジューリングや指導方法を確立。また本部校舎の責任者や新規事業の立ち上げから運営、収益化を経験。2017年に自律学習サカセルを設立し、現在に至る。

-現在の仕事についた経緯-

東大合格は簡単でした。
こう言ってしまうと嫌な印象を受けそうですが、中学受験時代に「自分はこうすれば結果を出せる」という学習方法を確立できたこともあり、最小限の努力で合格を果たすことが出来ました。
大学入学後は、自身が体系的に学んだ中学受験の指導が強みを発揮できると考え、中学受験最大手の進学教室SAPIX小学部に勤務しました。
旗艦校舎で最上位コースを歴任したことは、学生としては異例だったようです。
移籍した個別指導塾では看板講師として、当初2教室だった塾を10教室に拡大する原動力になった自負があります。
ただ、塾が拡大することで質が低下する場面を目にし、「だったら自分で塾を作れば良い」と、自律学習サカセルを設立しました。
このように大学入学以降、20年以上一貫して中学受験に携わってきています。

-仕事へのこだわり-

指導においては「最終的に志望校に合格させる」ことから逆算して指導にあたっています。
そのために大切なことは「生徒自身が考える力を鍛える」ことです。
問題の解説を行い、生徒を分かった気にさせることは簡単です。しかしこれでは分かった「つもり」になるだけで、実際の試験では点数につなげられない生徒が多くなってしまいます。
そこで僕の授業では「どうして?」「どう考えた?」「説明して」「ここから先は自分で考えてみて」などの声掛けを多用して、生徒自身に頭を使ってもらうこと、手を動かしてもらうことを大切にしています。
最後まで僕が教えきることはありません。
生徒自身に解答に至るまでのプロセスを何度も体験させることで、問題に対する着眼の仕方から解答の組み立てまでを自分で行えるように指導しています。

授業においてはメリハリを大切にしています。
雑談や冗談を取り入れて基本的には楽しく進めていきますが、受験に対する自覚の欠如や自分で考えようとする意識の不足、以前に指摘された悪癖を繰り返すなどの反省が足りない様子が見られた時には、厳しく接することも少なくありません。
楽しいけれど気を抜けない、そんな時間を大切にしています。

塾の経営や運営、広報・宣伝、日常業務は「満点よりも合格点」を心掛けています。
迅速な初動を大切にし、その後は個々の担当者と協働することで質を高めて、合格点を確実に越えられるような仕事が出来ているのではないでしょうか。
ありがたいことに、一緒に働いてくれる皆さんは、個々の業務において僕よりずっと優れた人ばかりです。
僕自身も社会人として経験を積んだことで、何が出来ないかを強く自覚し、若い頃よりもカッコつけずに依頼できるようになりました。

このように中学受験を志す受験生家族にとって、算数指導に限らずに中学受験の総合コンサルタントとなれるよう日々を過ごしているわけですが、「楽しむ」姿勢は常に持ち合わせていきたいと思っています。

-若者へのメッセージ-

中学受験業界に入ったのは「勉強が得意だったし、学生としては稼げるから」という程度の、ほんの軽い気持ちでした。
そこから20年。まさか自分が中学受験を今も生業とし、会社を経営しているとは思ってもみませんでした。

ただ振り返ってみると、若さに甘えてダラダラしていた日々が今につながっているように思えます。
大学生時代の僕は夕方からSAPIXでバイトして、授業後は講師や職員の皆さんと朝まで飲んで、朝から昼までは読書をしたりゲームをしたりして仮眠をとって、またSAPIXに行くような日々を過ごしていました。

その当時に一緒に馬鹿をしていた仲間達は今。
僕の会社で働いてくれていたり、教育業界の有名人として活躍していて良い刺激をくれたり、互いに仕事を紹介しあったり、僕の生徒を通して活躍の様子を聞くことがあったり…
その当時とは違う場所であっても、同じ業界の中でつながっていることを実感しています。

若い学生の皆さんにとっては「得意なもの」「向いているもの」、言い換えれば、将来的に「稼げるもの」は今の時点では分からない場合がほとんどでしょう。
まずはバイトでも遊びでも、目の前のことに全力で取り組んでみましょう。
思わぬ出会いから自分自身の強みに気づくことができ、将来の仕事につながるものです。

人生、何が役に立つかは分かりません。
だからこそ目の前のことに全力で取り組んでおいて、損はないですよ。