英国ハートフォードシャー大学院 組織心理学理学修士(Master of Science)、米国ウェブスター大学オランダLeidenキャンパス 心理理学学士(BA)取得。日本ビジネス心理学会常任理事、オランダ最大の心理学会NIP(Nederlands Instituut van Psychologen)の登録心理士過程の心理士(労働と組織のセクター)。公認心理師であり、またアムステルダム日本人学校のスクールカウンセラー。発達障害児支援士でもある。日本、オランダ、米国、英国の心理学を組織・産業に限らず発達、教育など幅広く継続的に学び、現在も継続的に研究をしている。英国大学院を卒業後一旦帰国、2015年より再び欧州オランダ移住。日本在住時は、企業内メンタルヘルス支援を行うECG株式会社代表取締役就任、カウンセリングを実施する有限会社Easeの代表取締役就任、同時に慶應義塾大学SFC研究所キャリアリソースラボラトリー個人訪問研究員・同研究所認定キャリアアドバイザー、また心理カウンセラー養成講座講師として活動。また日本の数々のリーディングカンパニーでメンタルヘルスアドバイザー、コンプライアンスアドバイザー、セミナー研修講師、心理カンセラーなどを務める。著書が多数ある(後述)。専門は主に組織開発、メンタルヘルス対策、ストレス尺度の研究と開発、人材開発分野を中心に継続的に研究を行う。自身の英国、オランダ、アメリカ、日本の長期にわたる海外経験を活かし、現在は大人と若者のグローバルなキャリア支援、海外駐在員とそのご家族のメンタルヘルス支援、海外在住の子供たちのメンタルヘルス支援を行う。発達障害児支援士でもある。主な著書に 「リスクマネジメントブックス 事例で学ぶメンタルヘルス対策」(2009 第一法規株式会社) 、「今備えておくべき!海外赴任社員のメンタルヘルス対策」共著(2017 第一法規株式会社) 、「ビジネス心理検定模試 公式テキスト マネジメント心理編 経営心理・人事心理部門」共著(2013 中央経済社)、 「パラオへ行こう!」(2009 文藝社)などがある。プライベートでは心理学を学びながら、オランダ、英国、日本で二人の子供を育てる。長女はオランダで生まれ日本教育で育ち、一方長男は日本で生まれ、オランダで育つ。
略歴
現在の仕事についた経緯
結婚を機に留学していた英国からオランダへ移住し、新生児を育てながら大学に復学したことが心理学を学んだきっかけでした。心理学は人・人生の不思議に説明を与える学問であって、自分の人生と関連付けて考える部分が多く、日夜夢中で学びました。
オランダで大学を卒業後、間を開けずに英国に移り、英国大学院で修士課程を修了させ日本に帰国。当時日本はまだメンタルヘルスの意識が不十分で、日々、著書「事例で学ぶメンタルヘルス(第一法規)」を持ち歩き、さまざまな企業でメンタルヘルス対策を実施する意義をお話しするところからがスタートでした。
日本の厚労省が企業のメンタルヘルス対策を法令化する流れに押されて仕事は動き始めました。2015年には、日本では未開発の領域の海外駐在員とそのご家族のメンタルヘルス支援に領域を広げ、自分の強みを活かす方向に移行しました。
時に理想・期待と現実は齟齬が生じますが、どんな状況に遭遇しても自分がその先行きを決めることができるという自己効力感を育てていけば、不安を最小限にし対処していくことができます。
自分の人生を制御するのは誰でもなく、自分だという感覚です。山、谷、崖っぷちのように感じる人生の中では、特に日常的に自分の心のバランスを保つことが大切です。それがウェルビーイングの意味となります。
仕事へのこだわり
海外生活が長くどんなに多言語に長けている方であっても、内面を話すのには日本語が重要であることを経験上強く感じています。そのために、自分自身の海外経験をもとに個々にまつわる苦悩を日本語でしっかりとお聴きするようにしています。
同時に、言葉とは文化であり、自己のストーリーを語る唯一の手段であり、それはその人の生育環境と価値観に大きく関わります。ですので、本来の日本人としての個々のアイデンティティを大切にしながら、ご本人らしさを思い出していただく支援を心がけています。
この方針は最初からそのようにできていたわけではなく、経験を積むにつれてその重要性に気がつきました。私たちは未知の海外に憧れ、そこに住む人たちのように振る舞いたいと思いながら、どこか本来の自分自身を大切にしたい矛盾した気持ちを持っていて、そうやって心の中に故郷や出発点を内在化しながら日々踏ん張って生きています。
一方、頑張るほどに理想に振り回され本来の自分から離れて行き、その齟齬に苦悩しますが、本来は自分自身を見失っては頑張れないのが心の現実です。ですので、クライエントみなさんが軸を自分に戻して、そこから再出発できるように支援しています。
またクライエントに向けてだけでなく、自分自身のメンタルのバランスを整えるために心がけているのは、「自分の正解で生きる」ということです。何かの書物で偶然出会った言葉でしたが、日本的な(つまり協調的な)私の一部がその時まさに自分に必要な言葉だと感じました。
ふと誰かの目を気にしたり遠慮したりしてしまうような場面でも、海外では(また何かを始める人は)結果の責任を取るのは自分しかいないのです。ですので、自分が正解だと思う決断に突き進むことを決めました。
時にネイティブのように主張的に振る舞う自分を作り出すこともあります。結果、反論を受けることももちろんありますが、現実として誰も彼もから好かれる必要は全くなく、むしろ自分自身が自分を裏切らないことが最大の自分への支援であり、最も重要なことだと気がつきました。
万人に賞賛されるより、自分に良しとされることが健全なメンタルには必要なのです。事実、自分より他人の価値観を優先した時、私たちはどこか憂鬱感情を生じるものです。
若者へのメッセージ
現代はVUCAの時代といわれます。Vは変動性(Volatility)、Uは不確実性(Uncertainty)、Cは複雑性(Complexity)、そしてAは曖昧性(Ambiguity)です。近年のCovit-19の経験だけを取り上げても、この4つは全て容易に説明がつきます。
V:私たちの価値観は大きく変化しました。U:人生には唐突に予測不可能な事態が起こり、それは事前に備えることができないことが多々あります。C:オンライン化が定着したことで、仕事だけでなく価値観も越境傾向にあります。A:前例や学校での学習が陳腐化し、瞬時の判断で新たな状況に対応せざるを得ない時代です。
全てに共通する、また反復使用できるたった一つの正解はありません。正解はその都度自分で作るもの、これから皆さんが生きる時代はそういう時代です。その時代にどのように自分らしさを創出し、いきいきと働くことができるでしょうか。それが皆さんの課題となります。
私が専門とする心理学も長い歴史の中で臨床的な支援側面ばかりが強調されてきました。そのために、人のよりポジティブなウェルビーイングや健康的な側面の促進を促す組織心理学(職場の環境・集団・個人のパフォーマンスを最善化する心理学)はなかなか理解されずにいました。私はそんな時代で、自分のできること、スキルをどう表現し認識してもらうかという創造の苦しみを長く経験しました。
そこで学んだのは「案ずるより産むが易し」、つまり深く考えすぎるより行動を起こす方が得るものが多いということでした。伝統的に日本は、十分に自信が持てるようになるのを待って一人前を名乗りますが、それはVUCAの時代ではnot the case、違います。VUCAの時代は経験を積みながら自信を積み重ねてください。
激変のスピードは、みなさんの自信を決して待ってはくれません。そんな中でブレずに信頼できるのは、自分自身の判断です。自分を信じて、「自分の正解」で決めていけば良いのです。SNSの時代ですから流言蜚語が多々聞こえても、冷静になって考えるとその批判的な比率は大きくはなく、むしろ周囲には激励の比率の方が大きいはずです。ただ、ネガティブ情報に魔法をかけられて聞こえなくなっているだけです。
気が付いていないだけで、実は私たちは誰もが既に何かの側面について年齢や性別など関係なく「既に十分に秀でている部分」が必ずあります。それに気が付くこと、また不要な情報を取捨選択することで自分自身に自信が持て、それが自分に勇気を与えてくれます。失敗はVUCAの時代には有利に働くことはあっても長期的にはダメージにはなりません。皆が未知の時代を経験しているからこそ、完璧を目指さず、不完全な自分を愛し、学びの数を増やすことに従事してください。
どうぞ、積極的にチャレンジしてください。する後悔よりも、しなかった後悔の方が大きいことも心理学は実証済みです。